Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第21章 緋色の煩悩【赤井秀一】
「……私にはアイツがラムだとは思えないんだけど……シュウはどう?」
「ああ……昼間はキャメル達がアイツを尾けていたんだろう?」
「そうね」
「四六時中誰かに尾行されていたら、普通組織の幹部連中ならその気配に気付く筈だ……だがヤツには周囲を気にする素振りが全く見られん……おそらくハズレだな」
「ええ……まあでも、念の為自宅に帰る所までは確認しなきゃよね……」
俺達は暗い路地に停めた車の中から、呑気そうに居酒屋の窓際で酒を飲む隻眼の男を見張っていた。
すっかり緊張感は薄れている……ふと対象者から目を逸らし、通りの行き交う車を眺めていると……
見覚えのある白いスポーツカーが右からやって来て、俺の前を横切り、左方向へ、そして視界から消えていった。
車種はRX-7、運転手はおそらく降谷くん、そして助手席には……間違いなくが乗っていた。
……彼らは何処へ向かっている?
ここは自宅へ帰る方向とは全く違う。
二人でどこか食事にでも行くのか。同僚と仕事終わりに食事くらい、別に不思議ではない。しかしそれなら俺に連絡のひとつでも寄越せばいいものを。相手が降谷くんなら尚更だ。
スマホを取り出しとのメッセージを確認するが、それは昼間のやり取りで終わったまま。
可能性の薄い対象者よりも、二人の行方ばかり案じてしまう。
「……シュウ……?ちょっと?何かあった?怖い顔して」
「いや……何でもない」
「何かあるようにしか見えないんだけど」
「ああ……何かあっては困るな……」
「え?……どういうこと?」
にはなりの考えがあって動いているのだろうか。例えば組織の動向を降谷くんから探ろうとしている……とか。
しかし飽きもせずよく飲む男だ……その後も店を変え相手を変え、対象者は夜の街を飲み歩いた。
ソイツが自宅に帰ったのを見届けたのは明け方だった。