Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第19章 飛び越えてしまった【萩原研二】
玄関からも風呂場に通ずる所からも、寝室は絶対見えないし、私達が一線を越えてしまったことは、陣平には分からない筈……
ハギとリビングに戻り、飲みかけの缶ビールを一口……飲むけどぬるい。キッチンで缶の中身を流し、冷たい水をたっぷり飲むと、ちょっと生き返ったような気分……
時計を見れば9時半。
新しいビールを手に、つい一時間程前と変わらないポジションに座り直す。
「……、陣平ちゃんには」
「分かってる、私、今日は飲んで潰れて忘れることにする」
「いや、そうじゃなくて」
「どういうこと……あ、陣平……おかえり!早かったね」
何食わぬ顔(のつもり)でシャワーを済ませた陣平を出迎えるも、私の心臓はずっと変な動き方をしてる。
「なあ聞いてくれよ、あんのニャンって女……!」
陣平が機嫌悪そうに喋り始める。冷蔵庫からビールを取り出し、それこそ、つい一時間程前と変わらない場所にドカっと腰を下ろした。
話を聞けば、ここを出て、待ち合わせてた店に向かって、その子に会えたはいいが、彼女は大層ご立腹だったそうで……
陣平は、彼女に会ってしばらく平謝りしてたみたいだけど……何かがいけなかったのか、グラスに入ってた飲み物を勢いよく吹っ掛けられて……頭から何から濡れてしまったんだと。
そして自宅に帰るよりもハギの家の方が近いし飲み直せると思ったから戻ってきたと。
「じゃ。今日は飲むか!」
「朝まで飲む!」
「いつものことだけど!」
三人で缶を合わせて今日二回目の乾杯。“気の毒な陣平を慰める酒”の体だけど、私も今夜は酒無しではいられなかっただろうから……とことん飲んでやろうと思う。
なんだかんだ、この三人でいる時間って凄く楽しいのだ。
END
次章は、こちらの続編のようなお話ですが、また違う、別のお話です。