Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第1章 月夜に現れた紳士は【キッド/快斗】
公務員一家に生まれた私。
父母も祖父母も、業種は違えど国や都の機関で働く身。
そんな家で育ったからか、私も今は公の職に就くことを目指して大学に通っている。
両親のおかげで、大学生の身分ながら都内の結構立派なマンションで一人暮らしをさせてもらっていて。
でも明日からしばらくの間、実家(実家も都内だけど)に戻ることになっている。
現在午後11時。
いつも寝る時間よりもだいぶ早いけど、部屋の電気を全て消して、ベッドに入って目を瞑っていた。
明後日からは嫌でも毎朝早起きしなければいけなくて。
今日の内から早く寝る癖を付けようと思ったんだけど。
やっぱりすぐには寝付けない。
いつも夜中まで起きている人間(私)が、いきなり早く眠れる訳が無いのだ。
一旦寝るのを諦めて、目を開けて窓の方を見る。
今日はいつもより外が明るい。月がこちら側に出てるのかも。
すると、バサっと言う布が擦れるような音と共に、大きな影がカーテンに映った。
・・・ベランダに何か来た!?
鳥?にしては大きすぎる。
泥棒?にしてもここは地上20階だ。有り得ない。
父に電話しようかとスマホの在処を確認した。
私の父は警察官なのだ。
でも何か大きな物が飛んできただけかもしれない。
一度ベランダを確認する為に、暗い部屋の中、ベッドからそろりと這い出た。
音を立てないよう、窓際に近付き、カーテンを少しだけ捲ると、見えたのは白い大きな布。
・・・どこかのシーツでも飛んできたのか?夜だけど?
もう少しだけカーテンを捲ると、その白い布が大きく動き、次の瞬間目の前に白いシルクハットを目深に被った人間の顔が現れた。
口元に指を1本立てて「シーっ」のジェスチャーをしている。
驚いてカーテンを握っていた手を離して、その場に尻もちをつく。
心臓が一気にバクバク音を立て始めた。
まさか。
「か、か、怪盗キッド・・・?」
声になってない声が口から出てきた。
頭の中にニュースの映像がよみがえる。
白いマントを付けたタキシードに白のシルクハットの出で立ちで現れ、華麗に獲物を盗む、世界を股に掛ける風変わりな泥棒・・・
そこにいるのはそのキッドか?
ちなみに、ベランダにいるのが本当にキッドなら、父にも警察にも連絡はしないつもりだ。
だって・・・会ってみたかったから。