Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第13章 好きだと言うのは難しい【服部平次】
「なんでがウチにおんねや」
「アタシかて来たくて来てる訳やない」
「高校生にもなって一人でお留守番もできひんのか」
「できるわ!オバチャンにたまには顔見せたりーてオカンが勝手に……せやから平次の家に来たんちゃう!オバチャンの家に来てるんや!」
次の日、仕方なく平次の家に来て。平次と顔を合わせた瞬間からこれや。
ほんま、あかんわ……喧嘩したい訳やないのに、口から出てくるのはそないなセリフばっかりや。
「アンタら、その辺にしとき!」
「……オカン」「……オバチャン」
平次のオカン(静香さん)が突然アタシらの間に割って入ってきた。このオバチャンの持ってるオーラは半端ない。この人が怒ってると、部屋の室温が五、六度下がったんちゃうかと思うくらい、背筋がピシーっとなる。
あの平次ですら、オバチャンには敵わへん。
「平次!男やろ!ちゃんにもっと優しくできひんのか」
「……へいへい」
「ちゃんゴメンなぁ、平次も悪気は無いと思うんよ?」
「アハハ……大丈夫です、慣れてますから」
「久しぶりにちゃんが来てくれたさかい、今日の夜はてっちりやで!」
「ほんまー!?オバチャンのてっちりめっちゃ好きやねん!ありがとー!」
「ほな、楽しみにしててなぁ」
怖いくらい綺麗な顔で笑うオバチャンは、台所の方へ行ってしもた。
再び平次と二人になってもうて。無言の空気が、少し重たい……
「お互いオカンには頭が上がらんのぉ、……」
「せ、せやねぇ……」
「……んトコのオトンとはたまに会うとるけど、オカンは元気か?」
「そりゃ元気やわー、元気すぎてもうちょい大人しなってほしいくらいや」
あれ。なんや、久しぶりに平次とまともに喋った気がする。
「お前今日の模試どないやった」
「相変わらずやー、何でもできる平次と違うてアタシは凡人やもん」
「ほなせっかくやし、久しぶりに今日は二人で勉強しよか」
「ええの?……平次のヤマカンよう当たるしめっちゃ助かるわ……」
あれれ。まるで、あの一件が起こる前に戻ったみたいや。
胸が切ないような、嬉しいような……えらい複雑やけど……