第32章 雪降る時に
彼等が帰ると、ユンギは机を叩く。
溢れる涙を拭い力強く声を押し殺した。
なんで……これからなのに
悔しくて、苦しくて、
すると、彼女はそれを知っていたかのように病室に入ってくる。
驚くユンギ……
ユンギの顔を眺め、彼女は眉を潜めると、
赤くなった彼の手を握った。
「やっぱり、泣いている気がしたんです。……」
「なんだよ?それ?」
「だっ…て、辛い時は、1人じゃ苦しいから!あ、そうだ!これでも、食べます?」
彼女の笑みにユンギもため息を吐き、笑う。
「つうか、俺、まだ、食べれないんだけど.......検査もあるしさ.......看護師に何も言われなかったのか?」
彼女は首を傾げた。
「え!?食べれないのですか?!もう、ダランさん言ってくれればいいのに.......」
「知り合い?」
「あぁ.......私、保護された時、この病院にお世話になったんですよ!」
彼女の言葉に再び驚くユンギ、
「え?.......」
「だから、辛い時こそ、一緒にいた方がいいと思うんです。私も入院した当初、沢山泣きました。」
「怖くて、みんな何言ってるかも、伝えてるのかも、わからなくて.......」
「私、お母さんとお父さんの事普通だと思ってたから、.......きっとオッパより大変な患者さんだったんじゃないでしょうか?」
「だけど、沢山の人が私の悲しさを苦しさを思ってくれていたんです.......
だから、1人は駄目です。私が支えます.......」
彼女はそう懐かしそうに、目を閉じた。
ユンギは彼女の瞳に、 彼女を力強く抱きしめる。
「お前は本当、何時も......」.
「なっ!?ゆっ、ユンオッパ?!」
「ありがとう.......サユ、慰めに来てくれたんだろ?」
「そっ、そうだけど、」
動揺する彼女の首に頭を埋め、ユンギは言った。
「なら.......もう少しこのままで.......」
「慰めになったかっ.......わからないけど.......ただ、独りは本当に辛いから、」
彼女はどれくらいの勇気を持ってここに来てくれたのだろう。
恐らく、受付やナースステーションは、人が沢山いて、怖かっただろうに、
そう思うと、
自分の為に戻って来た彼女がたまらなく愛しくなった。