第12章 キツネアザミと矛盾の芽
まったくもって分かっていない。
「あのなあ、そういう所に漬け込んでくる変態がこんなにいるのに放っておきたくなるわけがないだろう?」
『えっと……?』
「ふふふ、中也殿が構わないなら私の膝に「構うに決まってんだろ誰がやるか」リアちゃん!!私の膝も空いてるぞ!!!」
『えっ、カゲ様そんなに無理しなくていいよ?そこまでわがまま言うつもり無……痛っ!?ちょっ、なんでチョップするの中也さん』
そういうところだぞとつっこむのに本気で怪訝な顔をされる。
まったく、この天然娘が。
「いいかリア、おまえの膝上座りと抱っこ強請りは世間一般的に見ても“ご褒美”だ」
『変態がいる』
「否定はしないがその変態がこんなにいるだろ、見てみろよ」
即座に膝上を空けて両手を差し出す雪小路、反ノ塚、蜻蛉に夏目、御狐神に髏々宮。
いや髏々宮もそっち側か。
『えっと?』
「俺はこんなにも大人気なリアちゃんへの甘やかし権を、いつも本人に強請られているわけだ。光栄に決まってんだろ」
『あの、ちょっと意味がよく分からな……』
「リアのためとかじゃなくて、自分が可愛がりたいだけなんだよ。おまえ可愛いんだってば」
『中也さんはリアとお付き合いしてくれてるからそう言ってくれるだけで「リアちゃん?」……だってその、ほら、あの…………せ、世間一般的に見たらあんまり関わんない方がいいじゃないですか。こんな厄介者』
「いや、世間一般的に見てもリアは可愛いからな?」
『中也さ「俺としてはおまえが好きに甘えてる時とか可愛がられに来てくれる時とか、一番可愛いと思ってるけど」……』
少し考えてから、俺の隣に座っている男の顔色をちらりと伺うような素振りを見せる。
それに気づいて嬉しそうなオーラを出したそいつは、珍しく……というか恐らく初めて、その仮面を外してテーブルに置き、素顔を晒してリアに向き直る。
「おいで、リア」
『……あ、遊びたくて来たんでしょ。リアになんか興味無いくせに無理しなくていいし』
「何を言うか、私はおまえの水着姿を見たくてどうしようもなくて四国から戻ってきてしまったというのに」
明日はもっと遊んでやろうな、と綺麗すぎるその目を優しく細めて手招きするそいつに、尻尾を生やしきって甘えに行った。
『カゲ様の浮気者』
「誓ってリアちゃん一筋だ」
にしても顔が良いなお前。