第11章 珪線石の足音
リアが席を外してから、首領と二人で経過を見守るべく……尾行する。
そう、尾行である。
「首領、やはりリアは太宰と面識が?」
「僕が中也君に教えようものなら、彼女は君に嫌われるのを恐れて姿を眩ませかねないけれど」
「なるほど、相当なワケありで……?あの、リアは何故地下に入らないのでしょうか」
「入れないんだろうねえ、リアちゃん中也君に話しかけるのだってものすごい勇気出してるくらいだし?入りたての頃なんて毎日君のことちょっと離れて様子見てたんだよ」
「そう、それ気になってたんです。どうしてそんな?」
「どう接したらいいか分からなかったんでしょ、あの子中也君のこと大好きだし……でも君、うちの子達から人望あるし仲いい子多いでしょう?」
ああ、そんな風なこと書いてたな。
「まあそんな引っ込み思案な上に、好きな相手にほど近付けない性分の彼女への最適解はだね」
盗聴器から、あいつの声が聞こえた。
「そこにいる?入っておいで」
『!』
あれだよ、と監視カメラの映像を指さして、簡潔に教えてくださった。
奴の呼びかけに対してようやく動いた彼女は、ぴょっこりと地下への出入口から顔を覗かせる。
「やあ、久しぶり。もう家出はいいのかい?」
『家出……?』
「……おや、まさか君記憶をいじったね?ごめんごめん、まだそんなに私のこと好きだったの君……おいで、リアちゃん」
恐る恐る階段を降りて、一直線に奴に向けて……飛びついた。
「相変わらず軽いねえ、食事をちゃんととらないからだといつも言っていただろう」
『食べてるもん』
「体温が低い、また無茶しただろう……そんなに私と一緒がいいの?」
そしたら中也は離れちゃうんじゃない、と言ったそいつは、やはりリアのことを知っている。
「それに私は今探偵社員だからねえ、着いてきたら君が中也と敵対することになってしまうし……一緒にいても何も君のためにならないと思うけど」
『……リアのこときらいになったから?』
「え゛っ」
げっ、と言いたげな奴の表情は珍しい。
「そんな風に思ってたの!?違うからね!!?」
『お家ごと燃やされてたし』
「君の足が着いてしまったら大変だったから『リア、今どこに帰ったらいいか分かんない……お家、無い』…………今の部屋は寂しい?」
『そこにいろって言われたから、いるだけだよ』