第11章 珪線石の足音
『……あの』
翌朝、俺の腕の中でもぞりと動いた感触がしたかと思えば、どうやら彼女が起きたそうで。
何か言いたげにおどおどしているのが可愛らしくて狸寝入りを続行するのだが、何やら俺の腕を退かしたいらしい。
『重……、ちゅ…………か、幹部』
ひよって言い直してしまったのをなんとかしてやりたいが、さてどうしたものか。
多分俺のこと名前で呼びたいんだろうこいつも、元々知り合いだったとかなんとかいう話もあるようであるし。
『中原さん……な、中原さん、起きてください』
「……よく聞こえねぇな」
『!?起きてるじゃないですか、腕重たいから退けて「もう一回、やり直しだ」やり直し!!?』
「リアちゃん?今俺勤務時間外なんですけど」
『へっ、あっ、今名前……♡』
相当嬉しかったらしい。
このお嬢さんのちょろさは前々から心配ではあったが、本当にそれでいいのだろうか。
いいに決まっている、俺がこの純情を他の人間共から守ればいいだけの話だ。
『中原さん……?』
「やり直し」
『…………ちゅうや、さん』
「よく出来ました。もっと抱っこしてやろうなあリアちゃん♪」
『離してって言ったの!ねえ!』
理解出来ねぇな、なんで離してほしいのか納得のいく理由があるなら言ってもらわないと。
『ち、近いから……離してくださぃ』
「おまえが寂しくないんならいいけど?」
『へ……?……い、や、そんな風に言われたら考えちゃ……中也さん??』
「なんだ?」
『……寝不足なら、リアご飯作れるよ』
寝不足というか、ラブレターの読みすぎというか。
あれはもうラブレターだろ、間違いなく俺宛の恋文だろ、なあ。
「いいんだよ、人生で一番幸せな寝不足だからこれは」
『あ、あんまり頭撫でたらダメです』
「なんで?好きなんだろ?」
『……えっ?なんで知って…………!?あっ、ちょっ、それ読むとか聞いてな「もらったんだから読むだろそりゃ」うわうわうわうわリアもう知らない!!今までありがとうございましたすぐ出ていくしもう顔見せないか____』
額に口付けを落として黙らせればわなわなと震えて顔を伏せる。
「なんで出ていくんだよ、おまえは一週間は俺に養われるんだからな」
『今の何』
「分からねぇほど馬鹿じゃないだろ?」
『あんなの読んだら嫌いに「可愛かったよ」……ええぇ…………?』