第11章 珪線石の足音
「そりゃあもちろん。これでもこいつを引き入れた責任は感じているので」
「リアちゃんに教えてあげたら喜ぶと思うよ〜?」
「いいんですよ、数えていったらキリがない……ったく、どいつもこいつも目の敵にしやがって。まあそれだけ優秀すぎるんでしょうけども、うちのリアが」
「中也君って、鈍感な割にはリアちゃんのこと陥れようとしてる子達に敏感だよねえ?リアちゃんほどまでとはいかずとも」
俺が気付かねぇと、あいつは優秀が過ぎて全部自分で抱え込んで処理しようとしちまうからな。
「そうでもしないとすぐにサボりに行ってしまいますから」
「へえ?そこまで気付いてたの」
「いえ、はっきり言って勘です。性格的にそうしそうだなと」
「そういうのを世間では愛とも言うそうだよ」
「まあ間違っちゃいないでしょうね、こんなに好かれてちゃそれくらいしたくもなってしまうものでしょう」
「へえ〜、本当にそれだけ?」
「ぶっちゃけめちゃくちゃ好みのタイプです」
それ教えてあげたら喜ぶんじゃない、なんて笑いながら出ていかれた首領だが、恐らく目を覚ましたら……今までの経験上、こいつはまともに今日のことを覚えちゃいない。
体温が戻るまで……首領の予想ではこの調子の食事を続けても一週間はかかる見込みなのだ。
もういっその事、本当に一週間付きっきりで面倒を見てやってしまおうか。
というか保護者代わりに連絡諸々をしてくれているらしい奴もまだ自立していない餓鬼なのならば、いっその事俺が養ってやってもいいくらいなのに。
執務室まで戻って寝かせると、上着を脱ごうと手を離しただけで不安げに手で引っ張られる。
「だぁいじょうぶ、離れねえよ」
ぽんぽん、と頭に触れたのがいけなかったのだろうか。
ゆっくりと目を開けて、起き上がって……俺を見つけると寝惚け調子で小首を傾げられた。
『……ちゅうやさん?』
くそ、相変わらず名前呼んでるの可愛いなこいつ。
「おう、起こしちまった?」
『…………あたま、優しくしてもらったから……誰かなって、思って』
「……撫でられんの嬉しくて起きちまったの?」
うん、なんて俺のシャツを引っ張ってくるものだから、それに従わずにはいられない。
引き寄せられるがままに密着して抱きしめ、めいいっぱい撫でてやる。
「なあ、しばらく俺の家にいないか?」
『うん……うん??』