第11章 珪線石の足音
「俺もそんなに露出させたいわけじゃなかったんだぞ?ただサラシで潰すのも勿体ねぇし」
『やっぱり胸好きなんだ、すけべ』
「俺が好きなのはリアの胸だよ」
もちろん他の奴に見せるのは禁止だ、と自分の外套を羽織らせると、ぽっと頬を桃色に染めて嬉しそうにする。
「機嫌なおった?」
『なおった』
「よぉし、じゃあ今度こそ温泉に『もっかいやって中也さん』…………」
この子のお願いを断れるはずもなく、きゃっきゃと嬉しそうにはしゃぐリアちゃん十五歳様に外套を着せ直してやると、心底嬉しそうにされてしまう。
なんだろうか、この毒気を抜かれたような感覚は。
まるで心を浄化されているようである。
「リアちゃん、それそんなに嬉しいのか」
『うんっ』
「そんなに???」
満面の笑みでうん!といいお返事をいただいてしまって抱き上げる。
何がそんなにツボだったのだろうか、まあ俺の服を着せられるのが好きなのは前々から知っていたけれども。
『なんか大事にされてるみたいですき』
「俺が銀河一大事にしてやるからなあああリア〜〜〜?????」
銀河一は大袈裟、なんて困ったようにはにかまれるが、その笑顔のなんと愛らしいことやら。
「いいんだよ、本気だから」
『ちなみに露天風呂でいちゃいちゃするともれなく敵さん討伐コース待ったなしっぽいんだけど、どうする?』
「あ?……結界は?」
『機能してるよ、相手が違う』
「ほぉ、人間か先祖返りってとこか。今どこにいる?」
『襲撃するならリアも連れてって』
「危険すぎるしここにいてほしいんだけど?」
置いてかれる方が危ないと思うけど、と言われて即座に作戦を切り替えた。
「そういう事なら話は別だ。おぶってるから手離すんじゃねえぞ」
『あの、一応リアも戦えるんですけど』
「んな事しなくていいんだよ俺がついてる時は」
『……相手にばっか構ってたらやだからね』
そっちを気にするか、そっちを。
「安心しろ、二秒で片付けてやる」
『リアの方がいっぱい構われてなきゃやだ』
「はいはい、構ってやるって」
『……やっぱり目出して歩くのやめ「やめなくていい、隠すな」……そっか。えへへ』
そうやって、何度も繰り返し人生を歩んできたんだろう。
こんな、まともに成長する前に捨てられ、殺されてきた子供がだ。
それ以上、殺しちゃだめだ。