第11章 珪線石の足音
「はい、あーん♡」
『ぁ……♡』
「美味しいかい?」
太宰の野郎にアイスを食べさせられてご満悦で頷く姫さんだが、あいつ寝起きで食わされてんのに警戒心とか無ぇもんな。
『?……おさむさん、あの』
「うんうん、なあに?」
『…………立てない』
「抱っこも出来ないでしょ、食べちゃったもんねえ」
よいしょ、と自身の腕で抱えて立ち上がり、作戦通りに移動を開始する。
『?、???』
「悪ぃなリア、ちょっとだけ楽にしてて」
『ぁ、ちゅうやさん』
「おう、すぐ終わるからな」
ちょっとだけ待ってな、と外部の音が聞こえないだけのヘッドホンを被せ、目隠しをすると動かなくなる……まあ動けないのだろうが。
「にしても、よく君がこんなやり方に合意したね」
「こいつに見せるよかいいだろ」
「脱力剤飲ませるとかやり口がマフィアだよ」
「いいんだよ、リアのためだ」
引っ付いてりゃ嫌でも俺の声は聴こえてんだろ。
こいつに二度とあんなゴミを見せるつもりは無ぇし、かと言って一人にするつもりも無えからな。
「ちょっとの間の辛抱だからなぁ、帰ったらいっぱい甘やかしてやるから」
『!』
別に、今日して欲しいと頼まれたわけではないし……こんなにも人数を揃えて欲しいと言われたわけでもないが。
「まさか、君まで着いてくるとはね」
「リア殿の宿敵は僕の仇も同然」
「君達あんなに仲悪かったのに」
「なんで芥川はそんなにリアに懐いてんだよ、今日そもそも呼んでもねぇぞ」
「それを言うなら君のところの立原君達だって似たようなものだろう?」
「全員こいつのこといいようにしてくれやがったゴミには日頃から殺意がわいてんだよ」
「まさか村上まで来るなんてね♪」
「うるせぇ、ケジメだ」
想像以上の大所帯にはなったが、奴には私兵がいるとの情報があるし、まあいいだろう。
「そんで、中也さん?なんでまた探偵社の奴らと協力を??」
「すみません、リアちゃんのためなら僕らも何かしたくって」
「谷崎、なんで俺まで」
「声かけてないのに着いてきたの国木田君だよ?」
「チッ」
「ふははははは!!悦いぞ悦いぞ!!!」
が、そこに紛れて響いてきた声にぎょっとして振り返る。
青鬼院蜻蛉……いや手前どっから湧いて出てきやがった。
「おまッ、夜になんだぞ!?何してる!!?」