第11章 珪線石の足音
「けどその、最終的に勝つための策っつったら……おまえが考える作戦ってことは、結果的にリアはリアのままで生きてられる道って事でいいんだよな?」
『……まあ、個体としては』
「個体って言い方やめろ」
『…………そうね、とりあえず……中也さんがこれから五年生き延びてさえいてくれれば大丈夫なはず。ただそうなると、恐らくこれから二年くらい……ヨコハマだけじゃなく、世界規模での戦いに巻き込まれることになる』
世界規模とは、またスケールのデカい話である。
『出来ることなら私がそれに巻き込まれて死ぬのも避けたいところだし……“一回で”成功するとは限らない』
「おい待て、一回ってどういうことだ」
『私の先祖はそもそも、九尾と人魚のハーフなの。でも覚の力も微力ながら……“自力として扱える範疇の量を”持ってるのよね』
「…………それが?」
『私が自分の未来を変えるために、覚の力を奪ってきた結果なのよ、それは』
言っている意味が、よく分からなかった。
しかしそれは彼女には筒抜けで、聞くまでもなく補足を入れてくれるのだ。
『一生涯を、何度も何度も繰り返してるの……繰り返せるシステムが、存在するの』
タイムマシンのようなものだと思ってくれればいいらしい。
実際はそんなに便利なものでもないらしいが。
『私の知識量が多いのは、覚の力の影響だけしやない。もちろんそれもあるけど……まあ所謂、頭がいい部類の人間なのよね、元々』
「まあ太宰に目付けられるだけの能力はあったってことだしな」
ちょっと嬉しそうなんだよな、そう言われると。
『先祖返りは転生する度に同じような容姿で、同じような人生を辿る……それってどこまで本当なのか、なんでそんなことになるのか。全部科学的に証明したくなったわけ』
初めて前世の記憶を持って転生した時からの研究らしい。
『そしてその過程で行き着いた先が、“悟ヶ原家”。先祖返りは“覚”の力を持っていて、私たち先祖返りのコミュニティの核のような家系……なんだけど』
ある時、そこに行き着いた……行き着いてしまった。
『先祖返りを殺す……なんて娯楽に手を出している方が過去に何人かいらっしゃっててね?』
胸がざわついたような気がする。
『最初たどり着いたところで、気付いた。ああ、そんなの覚や百目の力でもなければ勝てる相手じゃないって……だから奪った』