第11章 珪線石の足音
「折角お洒落してんのが取れちまったら勿体ねぇからなあ」
『……、ぁ…』
「朝まで反省させてやるよ、反論するなら今だぞ」
手首にタオルを巻いてから付けられた手錠。
あ、今日は開かせるんだ、なんて気付いた時点で抵抗する意思なんて無いようなものだ。
「リア?聞こえてる?」
『……え、?』
「…ほんと可愛いなお前は、よしよし」
抱きしめて撫でられるのに安心する。
これが好き…中也さんに抱っこされるの、大好き。
膝を立てた形で脚を開かされ、そのまま閉じられないよう拘束されれば、彼が私の身体を可愛がるべくして集めたそれらを取り出して、今日の気分は?なんて聞いてくる。
う、わ…明日遅番だからって本気で朝まで遊ぶつもりだこれ。
『ぁ、ぅ…中也さんの鬼…♡』
「濡らしながら言ってんじゃねぇよ、下着まで染みてんぞ」
『ん、っ!』
今されたらやばいから、それにこの人に長く長く愛されていると馬鹿になってしまうから。
だからと思って、初めてそれをこの人の前で咄嗟に口にした。
『き、今日は…やだ…っ』
ぴたりと動きが止まったかと思えば、まずは拘束を解いてから聞いてくれる。
「…理由だけ聞いていいか?」
『あ、ぅ…こ、これ以上…こわ、い……も、もう気持ちいのやだ、今日…』
「これ以上って…?……えっ、手握られんのそんなキツかった?リアちゃん??」
やめてくれそうな流れにホッとして、こくこくと首を縦に振った。
そうだ、嫌って言えばほんとに怖いことはやめてくれる。
怖い…というか、なんというか。
ただただ馬鹿になってしまいそうで、怖気づいただけ。
「マジで慣れてねえのな…?まあよく言ってくれたよ、よしよし。じゃあ今からどうしようか?何か一緒に料理でもする?」
『……ごめんなさい』
「謝んなくていいって。気が向かねえ時にするもんじゃねえよ」
__焦った、マジで聞いてよかった…__
心の中では動揺しきっている様子の彼は、本当に出来た人だと思う。
微塵も怒っていないどころか、私の為を思って反省してくれてしまうような人。
…手、繋いでくれたのは嬉しかったのに。
この人に抱いてもらうのも好きなのに、なんで怖くなっちゃったんだろう。
『いや、でも嫌じゃないのになんか…』
「気が乗らない日なんかあるって、気にすんな」
『……うん?』
変な、感じ。