第9章 蛍石の道標
付き合えだのなんだのいいはしたけれども、指で五回は軽く続けてトんでくれてしまったので潔くそこで終わりにした。
『止ま、んな…ッ♡、ぁ、…終わ…って、?終わ、り??、』
「ん、おしまい」
ちぅ。
唇で触れ合うのがとことん好きらしい、この姫さんは。
「んで、リアちゃん。なんで今日俺の方見てくれなかったんだ?」
『…恥ずかしくて』
「ここまでされてる相手の顔見て恥ずかしいってお前…」
なでこなでことこれ以上泣かないようあやしつつ、外套を羽織らせて前を閉じさせる。
『ふ、不整脈…すごく、てあの………なん、か…なんていうかその…な、中原さんいきなり大人っぽいから』
だんだん小さくなる声が紡いだそれに唖然とする。
「お前俺の事大人だと思ってなかったのか…?」
『そうじゃなくてッ!!』
ふぅ、ふぅ、と呼吸を落ちつけながら、ぽす、と胸元に頭を預けてくるそいつ。
仕切り直して襲ってやろうかお前、あ???
『……い、いちいち紳士にされ、たら…どうしていいか、分かんなくなります…』
「は?慣れろ」
『い、今までしたことないくせに』
「そうだったか?じゃあ今日から慣れろ」
『ぱわはら』
減らず口はこの口ですか、と頬をむにむに軽く摘んで揉む。
つねることは出来ないが仕草はしたかったのだ、つねるのに成功した試しが一度もないが。
『い、今だって結局リアの体力に合わせて…』
「勘違いすんな、休みにとってるだけだから」
『……そんな穏やかな顔してリアのこと見てなかった、のに』
「?…まあそりゃ仕方ねえだろ、こんなに俺に一途な子のこと忘れちまってたんだから。“思い出したら”好きで好きで堪んねぇし、案の定可愛いことばっかしてくれっし見てて幸せだし」
過度過ぎますと照れられるも、しかしここで、流石に伝わっていないということに気が付いた。
まあ、急かすような話でもないしいいと思うが。
ふとした時に読むって可能性もあるし。
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『……きれ、い』
「頭おかしいだろ手前、消えろ」
『あ、あの私ね…!』
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「…ホットミルク飲む人」
『リア中原さんのほうがすき』
「おー、知ってる」
『…やっぱり何かヘン』
「キス千回したら納得す『死んじゃうから遠慮します』死ぬわけねぇだろ、戻ってこい」
『っ…ちょっと下さい』
「はい、勿論。姫さん」