第7章 燐灰石の秘め事
『次あそこ』
「はいよ」
『その次あっちね』
「はいはい、喜んで」
動ける程に暖まってきた身体を中也さんが過保護を発揮しておぶってくれるので、そのまま食べたい放題色んなお店に連れ回す…連れ回させて貰うという方が正しいだろうか。
『……ねえ、歩けるんですけど』
「え?病人歩かせると思ってんの?」
『病人も歩くよ?熱くらいなら』
「お前熱くらいじゃないからダメ。あと冷たいもん頼むなら絶対ホットの飲みもん付けるから」
明け方に営業しているカフェは穴場なのだが、私の能力と中也さんのつてを辿ればいくらでも現れるのがこの街だ。
『…歩いちゃダメ?』
「なんでそんな歩きてぇの?遠慮してんなら却下だぞ」
『いや、別に…』
「……言ってみ」
チラ、とこちらを目で見やる彼に促されて、素直にそれを声に出す。
『手、繋げないなぁって、…』
「…しんどくなったらすぐに自己申告。守れる?」
『え、…う、うん』
「よし、んじゃ…ほれ」
地面にゆっくり降ろしてくれて、そのまましゃがんだ状態で左手を差し出される。
目線が低くなってる上司様に目をぱちくりさせれば繋がねえの?と問われるので、どきどきしつつもそこに自分の右手を重ねて。
指を絡めて、立ち上がった彼の手を引いて歩く。
あ、なんかデートっぽい、こういうの。
こんな時間じゃ人も少ないし。
『…ンン、』
「!…そうそう、ちゃあんとくっ付いとけよ」
ぎゅう、と両手で彼の腕に抱きつけば、困ったように微笑んでぽんぽん、と撫でられる。
ここ好き…やっぱり大好き。
いっぱい一緒だもん。
『…女の人のにおいする』
「あ?何が」
『スーツから』
「…まあ、任務先で接触でもしたんじゃねえ?覚えてねえわ」
読んでみてくれと頼まれるので彼の記憶を読んでみたところ、彼が認識していないだけで本当に構成員と少し接触があった程度のよう。
『ふぅん、…リアがいないところで中也さんとこにいたとか、なんかムカつく』
「他の奴らが誰もいないところで俺ん所にいるのはリアだけだがな?」
『…当然よ』
ちぅ、と袖を捲っている腕に印を付ければこらこら、と笑われた。
嫌がってないくせになにがこらこらだ。
『なぁに、お嫌い?』
「いや?どうせ付けるならもっとどぎつい所に付けてくれねえかなって」
『…帰ったら付けたげる♡』