第6章 スカビオサの予兆
「何粥がいい?おじやでも…雑炊でもいいぞ」
一緒にプリンを作りながら、腰元に抱きついてきて可愛らしくも尻尾を揺らしてくれている姫さんを撫でる。
お気に召してくれたらしくぴこぴこと耳が動くのだが、彼女的には料理にさほどこだわりは無いらしい。
『中也さんの好きなの…♡』
「食べるのお前だけど?」
『リアも中也さんの好きなの覚える』
「…んじゃ、おじやで」
横んなっとけっつったのに立ち上がるし。
離そうとしたら離そうとしたで半泣きになられるし。
おぶっときてぇけど火使うからあぶねぇし?
こうするしかねぇよなぁ…
なんでこんな可愛いのこいつ。
米を煮込み始め、煮立つのを待ちながらプリンを容器へ移し、カラメルソースを入れていく。
それらを冷蔵庫に入れればおじやの味付け。
『…手作りのおじやなんか、中也さんが初めて』
「そうか、それは光栄だ。熱出してちゃあんま味分かんねぇだろうけどな」
『分かるもん』
「あーはいはい、好きなだけ食え…立ってんの辛いだろ、こっち来い。もうあとこのまま仕上げるだけだから」
先程までのようにして横抱きに抱き上げるべくしゃがむときょとんとした顔をされる。
それからとろりとした瞳で見つめられるのだが…さては頭ボケてんなこいつ。
『…抱っこ?したいの??』
「……おう」
『…そんなに言うならさせてあげる、♡』
うわ、すげぇデレてやがる。
普段からこうしてりゃいいのにこいつ、どうせ俺がしんどいとか俺がしてばっかだとかくだらねえ事ばっか考えてるんだろうけど。
「おーきたきた、可愛い子が」
『そ、そういう事言われる、の…い、いきなりはずるいの』
「何がいきなりだよ、俺からすりゃ常時これだぞ。覚えとけ」
『…、…なん、か…泣きそ』
「泣いたら今度こそ氷嚢持っとけよ」
ああそうか、もしかして風邪引いて誰かといるのに慣れてないのかもしれないな、とまた思う。
前にも感じたけれど、そうか、すり込み教育もここまでくると本当にある種の調教だ。
「人肌恋しかったんだろ?お前…甘えてろよ、いつでもこんな風にして。俺なら大歓迎だから」
『……好きぃ、…っ』
「残念ながら俺の方が大好きだ」
『リアだもん』
「俺だ」
『証拠は?』
「俺はお前が嫌がっててもベタベタすんぞ、覚悟しとけ」
『ぴゃ、ッッ!!?!?』
