第4章 ペット専用部屋
中野が連れて来られてから2ヶ月が過ぎた。
坂木は中野の首輪についている紐を外した。これは調教終了を意味する。調教終了した者は過去に数人。後は逃げ出そうとしたり坂木に刃向かったりして始末された。
調教終了したペットは専用の部屋が与えられアジト内を自由に動きまわる事を許される。自由は増えるが同時に場所を構わず抱かれる事を意味する。
今までは調教部屋のトイレや風呂を使っていた為、アジト内を見るのは初めてで外の様子を全く知らない中野はドアを少し開けて外の様子を覗く。
覗いた先は普通の部屋だった。
「なんだ普通だ。もっと特殊な部屋だと思ってた…」
普通の部屋だった事に安心した中野はゆっくりとドアを開き部屋を出た。
「あ、中野君。こっちおいでよ」
中野に気が付いた手下が声をかける。
声をかけたのは調教中、傷ついた中野を手当てしてくれていた手下達のリーダーだった。
中野は呼ばれるままに、手下数人が座っているソファーに近づいた。
「調教終了おめでとう。中野君とこうやって会えるのを楽しみにしてたんだよ。俺のコードネームはヨンだよ。よろしく!」
マフィアに似つかわしくない人懐っこい笑顔で手を差し出され、中野はヨンと握手した。
「俺はケンタ。よろしくね」
ヨンの隣に座っていたケンタは少し幼く見える可愛い笑顔で微笑む。
「俺はゴウキ。よろしく」
ケンタの前に座っていたゴウキはチャームポイントの八重歯を見せて笑う。
「俺はジュンジ。仲良くしてな」
ゴウキの隣に座っていたジュンジはキラキラと瞳を輝かせ中野を見つめる。
「えっと…。よろしくお願いします」
中野は思わぬ歓迎を受けて戸惑い立ち尽くす。
「中野君も座りなよ」
ヨンがソファーの自分の隣の空いているスペースをポンポン叩く。
「ありがとうございます」
中野は遠慮気味にソファーに座る。
「そんなに堅くならなくても俺達何もしないから安心して」
あまりの緊張に体を堅くさせている中野にヨンが優しく話しかける。
「はい。皆さんは俺がここに来てから俺を抱きに来てないですから。それに皆さんは俺を手当てしてくれました」
「俺ら中野君を抱く気はないよ。安心して」
ケンタが優しく微笑む。
「俺らは中野と仲良くなりたいだけやねん」
ジュンジは少し言葉に訛りがあった。
初めて聞く方言だったけどジュンジの訛りは中野を安心させた。