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ハリー・ポッターと闇の姫君

第8章 【対戦校のお出迎え】


 ハリーが本当にそれで納得したかどうかは分からない。だがハリーは握りしめていた拳を解き、クリスと手を絡ませると、かみしめる様に何も言わず目をつぶっていた。

 それから数週間、ハリーは一言もシリウスの事を話題に出さなかった。しかし、毎朝ふくろう便が届く時間になるとヘドウィグの姿を探していたし、夜の談話室でもなんとなくそわそわしていた。
 クリスも、痣の事が気になって仕方なかったが、頼れる人がいなかった。父に手紙を出そうかと思ったが、いつも途中でなんて書いて良いか分からなくなって、便箋を破り捨てていた。

 もしルーピン先生が居たら、ルーピン先生に相談するのに……だが、今いるのはムーディという――クリス曰く――頭が少々年代遅れな爺さんだ。しかも『元・闇祓い』ときている。そんな人に『例のあの人』が側近に付けていた印を自分も付けていると知ったら、いったいどんな目に遭わされる事か。

 それに、ムーディと言う先生は超がつくほど型破りな教師だった。なんと『禁じられた呪文』の内、『服従の呪文』を直接生徒にかけるという授業を始めた。
 生徒の鏡のハーマイオニーが、勇気をもって「その呪文をヒトにかけるのは違法だ」と言うと、ムーディ先生は「もっと厳しいやり方で学びたいのであれば教室を出て行って良し」と言いだしたのだ。
 ハーマイオニーは真っ赤になりながら小さい声で「出て行きたいわけではありません」と呟いた。

 それから、ムーディ先生は1人1人に『服従の呪文』をかけて、ある生徒には教室中をコサックダンスで歩き回らせたり、またある生徒には2回転のバク宙をさせたり、またある生徒にはサルの物まねをさせたりした。
 そして、お待ちかねのクリスの番が回ってきた。

「グレイン、次だ」

 クリスは立ち上がり、返事もせずにジッとムーディ先生を見つめた。何が気に入ったのか、それを見てムーディ先生が満足そうに笑った。

「インペリオ!」

 呪文をかけられた途端、2年前、トム・リドルに呪文をかけられた時と同じように頭がぼーっとして、何も考えられなくなった。そしてふわふわと夢心地の中、自分の声ではない別の声が頭の中に響いてきた。
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