第7章 【S・P・E・W】
「ハリー!!」
「僕、もう寝る。それじゃ」
それだけ言い残すと、ハリーはテーブルに乗せてあった宿題一式を乱暴にかき集め、大きく足踏みをしながら男子寮へと帰ってしまった。取り残されたロンとクリスは、黙って顔を見合わせた。
「なんか……今日は厄介な事ばかり起こるな」
「僕達の苦労、誰かにも分け与えたいよね」
まるで台風が去った後の様に、ロンとクリスはやや茫然としてしまった。それから2人はうだうだと今後の対策について話しをしていたが、ハーマイオニーは屋敷しもべの地位を上げるのに頭がいっぱいだし、ハリーは自分の所為でシリウスが危険を冒してホグワーツに戻ってくると思い込んでイライラしていて、両者とも手の出し様がない。
結局、12時の鐘がなったのを合図に、ロンとクリスもそれぞれ寮に戻る事にした。
部屋に戻ると、ルームメイトはもうみんな寝ていた。クリスは部屋着に着替えながらハリーの傷の事について考えた。
以前ハリーの傷が痛んだ時『例のあの人』は傍にいてハリーの命を狙っていた。では、今回傷んだのは――クリスは恐る恐る左手首を見た。
すると、気の所為ではなく、左手首の痣が少し濃くなっていた。1年生の頃『例のあの人』と戦った時ほどクッキリとではないが、確実に、濃くなっている。クリスは大きく目を見開いてじっと見つめた。
コンパートメントの中で、ハリーは『闇の印』が現れる3日前に傷が痛んだと教えてくれた。それに頭にこびりついて離れない消えない、トレローニー先生の学期末試験中での予言……。
もし、本当に予言通り『例のあの人が』力をつけてきているとしたら、この先は――クリスはベッドにもぐり込んでひたすら目をつぶっていたが、不安で胸がつぶれそうで、その晩は眠れ無い夜を過ごす事になった。