第6章 【許されざる呪文】
ドラコと2人きりの時は、不思議と心が落ち着く。それもそうだ、産まれた時から一緒に居たんだから、もう家族同然だ。これはハリーやロン、ハーマイオニーには無い安心感だ。
だからこそ、結婚相手には向かない。ルーピン先生に持っているときめきや、胸の高鳴りと言うものが一切ないのだ。
ふと、実家の秘密の部屋で見た両親の馴れ初めを思い出した。絵を描いている父に楽しそうに話しかけた母、そして父に絵を描いてもらって嬉しそうに頬を染める母の姿。そう、どうせ結婚するならそういうときめきが欲しい。そう思うのは我儘なのだろうか。
「私は……ただ好きな人と結ばれたいだけだ……」
――そう、そしてそれは、ドラコじゃない。それだけは今ハッキリしている事実だった。
翌日、ネビルが大の苦手の『魔法薬学』の授業でまたも大失敗をやらかし、スネイプから樽いっぱいのヒキガエルの腸を抜きだすと言う処罰を与えられ、ネビルは談話室に帰って来る頃には正気を半分失っていた。
「スネイプの奴、また狡い手をつかって僕達を1年間苛めぬくつもりだな」
「また『闇の魔術に対する防衛』の教師になれなかったから、苛ついているんだ」
ハーマイオニーが、ネビルの爪の間に詰まったカエルの腸を取り除く『ゴシゴシ呪文』を教えてやっている最中に、ロンとハリーが言った。
スネイプが『闇の魔術に対する防衛』の教授の座を狙っている事は、ホグワーツの人間なら誰でも知っていた。しかしクリス達の知っている限り、スネイプがその座に就いたことは1度もないし、また『闇の魔術に対する防衛』の教授に対して嫉妬とも呼べる嫌悪感を露わにしてきた。しかし今年のムーディ先生に対しては、極力接する事を拒んでいるように見える。
「何か2人の間であったのかなぁ?」
「そう言えば、ドラコがイタチに変えられた時、スネイプも知り合いだって言っていたな」
「そうだ!パパが言ってた!ムーディ先生って凄腕の『闇祓い』だったんだって」
合点がいったように、ロンがポン、っと手を叩いた。『闇祓い』が何か分からないハリーがロンに尋ねた。
「『闇祓い』って?」
「『死喰い人』を倒す事を専門にした役人のことだよ」
「つまり、スネイプは『元・闇祓い』のムーディが怖いのか。確かに、あのスネイプなら『元・死喰い人』って言われても頷けるしな」