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ハリー・ポッターと闇の姫君

第5章 【弾むケナガイタチ】


「やっ……止め――」
「ムーディ先生ッ!!」」

 クリスが制止しようとしたと同時に、マクゴナガル先生の声が玄関ホールいっぱいに響いた。クリスは走って廊下を横切り、ケナガイタチを抱きしめた。するとクリスの腕の中で、ケナガイタチは元のドラコの姿に戻った。それを見て、マクゴナガル先生は驚きの声を上げた。

「何事ですか!?それは、生徒だったんですか!?」
「さよう、ちと教育が必要だったんでな」

 マクゴナガル先生は雷に打たれたようなショックを隠し切れなかった。手にしていた本を落とし、急いでムーディ先生のところに駆け寄った。

「ムーディ、我が校では懲罰に変身術を用いる事は絶対にありません!!この事はダンブルドア校長が仰っていたはずです!」
「……ふむ、そんな話もしていたかもしれんな」

 まるで何てことない風に言うムーディに、クリスはだんだん怒りが湧いてきた。腕の中のドラコが身じろぎし、体が痛むのか、上体をクリスに預けたまま床に座り込んでいた。今やきっちりと撫でつけられているプラチナブロンドの髪はばらけ、顔にかかっている。頬は赤く染まり、息をするのも辛そうだった。

「ムーディ、貴方も教員ならここの規則に従ってもらいます!罰を犯した生徒は居残りか、所属する寮監に任せます!!」
「そうか、ならばそうさせて貰おう」

 ムーディ先生はコツ、コツコツと義足の固い足音を響かせながらゆっくりドラコとクリスに近づいてきた。
 この胸に湧き上がる感情は何だろう。ムーディ先生の顔を見ても恐ろしいとは思わない。クリスは血の様な赤い瞳で、キッとムーディ先生を睨みつけた。

「お前らは……そうか、確かルシウスの息子とクラウスの娘だったな。2人ともよく知っているぞ。父親によく言っておけ、ムーディがお前らを監視しているぞとな――さて、お前の寮監はスネイプだったな。奴もよく知っている、さあ来い!」

 ムーディ先生に腕を掴まれて、ドラコは無理矢理立たされ、引きずられるように地下牢への階段を下りて行った。
 取り残されたクリスは、姿が見えなくなるまで、ずっとムーディ先生とドラコの背中を見つめていた。胸の中に、黒いもやの様な物を抱えたまま……。
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