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ハリー・ポッターと闇の姫君

第32章 【幕引き】


 ダンブルドアが痛ましげに低い声で囁くと、それまでぼんやりとしていたクラウチJrの目に少し光が戻り、薄い唇を不気味ににやりと歪ませた。
 ウィンキーは耳を塞ぎたくなるほどの金切り声で泣き喚いていたが、その場に居る誰もが気にとめなかった。

「俺は父の遺体を禁じられた森の中へ運び、『透明マント』を被せた。ポッターから借りた地図で、ダンブルドアとポッターが一緒に城から出てくるのを知ると、俺は森を抜け2人の後ろに回り込んで後から来たかの様に見せかけた」

 それからクラウチJrはまた虚空を見つめながら、うっとりとした表情で笑った。

「俺は『闇の皇帝』と同じく、父を殺し、雪辱を晴らした。俺の人生の中で最も輝かしい瞬間だった」

 クラウチJrの言葉に、ダンブルドアはこめかみを押さえ目を閉じ、深くため息を吐いた。
 重い空気の中、ウィンキーの泣き叫ぶ声だけが部屋に反響していた。ハリーは何と言って良いのか分からなかった。頭の中がまだ混乱している。まるで非現実的な妄想を聞かされたかのような錯覚に陥っていた。

「ミネルバ、ここを頼んでいいかね?セブルスはクリスとアラスター・ムーディを医務室へ運んでやってくれ。ハリーはわしと一緒に部屋に来てほしい。良いかね?」
「でも……」

 ハリーはチラリとクリスの方を見た。まだ静かに眠っている。クリスが目覚めた時、傍に居てやりたかった。あんなに取り乱したクリスは初めて見たのだ。少しでも力になってやりたい気持ちが心の底にあった。

「シリウスがわしの部屋で待っておる」

 ダンブルドアが2人に聞こえないようこっそりと耳打ちした。それを聞いて、ハリーはダンブルドアに従う事にした。クリスも心配だが、同じようにシリウスの事も気になる。
 ハリーは名残惜しそうにクリスの髪をなでると、ダンブルドアに続いて部屋を出て行った。
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