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ハリー・ポッターと闇の姫君

第30章 【指し示す者】


 ヤナフとウルキの姿を追いながら、いつも馬車で通る坂を下り、デコボコの道を下った。
 ずっと走りっぱなしだったので、クリスは息が切れて脇腹が痛くなってきたが、夕日も沈み、夜もだんだんと更けはじめて来たのでのんびりはしていられない。

 ハリーやセドリックの事も気になるが、ヤナフとウルキを遣わせるなんて、父様にいったい何があったんだろう。その思いだけで走っていると、突然左腕に激痛が走った。

「痛っ!!」

 あまりの激痛に、クリスはその場にうずくまる様に転んでしまった。幸い怪我はしなかったが、左腕の痣を見て見ると、紋章が真っ赤に浮かび上がっている。
 これはただ事ではない。こんな風に痣がはっきりしたのは後にも先にも一度きり、1年生の時『例のあの人』と対面した時だけだ。

 どうしよう、一旦戻ってダンブルドアの所に行こうか。それとも――迷っていると、なんと遠くに人影が見えた。他の誰でもない、父・クラウスの姿だ。

「と、父様……?」

 空を飛んでいたヤナフとウルキが父の肩に下り、その黒い羽根を閉じた。この2羽が心を許しているという事は、父である事に間違いない。

 クリスはいったいどうしてこんな所に父がいるのか分からなかったが、腕の痣について話さなければならない事だけははっきりしていた。クリスは痛む左腕を押さえながらよろよろと父に近づいて行った。

「父様、あの……聞いて下さい。痣が、左腕の痣が……」

 しかし、父は何も言わなかった。いつも以上に真っ白い顔をして、呆然と立ち尽くしている。クリスがローブの袖をめくりながらゆっくり近づくと、クラウスはまるで壊れ物を扱うかのようにそっとクリスを抱きしめた。
 クリスは驚きと恥ずかしさで頭が一瞬真っ白になった。

「と、ととと父様?」
「――すまない……」
「……えっ?」

 次の瞬間、クリスはものすごい力で体が吸い込まる様にして、その場から姿を消した。
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