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ハリー・ポッターと闇の姫君

第28章 【憂いの篩】


「父……様」

 クリスはよろよろと座席の前に近づくと、年若い父の顔をジッと見た。普段から白い肌はより青白くなっており、やつれて生気というものを感じないが、間違いなく父・クラウスだ。
 そう言えばシリウスが言っていた。クラウチ氏の息子が捕まったと同時期に父が裁判にかけられ、“どちらの父親の方が非情か”と新聞が面白おかしく煽っていたと。
 辺りを見回すと、リータ・スキーターと思われる女が、自動で動くペンを羊皮紙の上でスラスラ走らせている。

 ディメンターが父を手枷付きの椅子に座らせると、クラウチ氏が咳をして唸った。

「これより、クラウス・グレインの裁判を執り行う。罪状は約1年前『名前を言ってはいけないあの人』の配下となって数多くのマグルや魔法使いを苦しめた件についてだ」
「その前に、私のお話をお聞きください閣下!」

 聴聞席から1人の男が立ち上がった。プラチナ・ブロンドが眩しく、腕には白いお包みを抱いている。
 あれはきっと、若い頃のルシウスおじ様だ。ドラコが成長したらあんな感じになるだろうと思われる姿をしている。では腕の中に居るのは、ドラコだろうか?

「彼は最愛の妻を人質に取られ、家族を守るため仕方なく『例のあの人』に従っていたんです!ですから『例のあの人』失脚以降、魔法使いどころかマグルにだって指一本触れていません!!どうか情状酌量の余地を!!」
「しかし彼の所為で多くの命が失われた事に間違いはない!」
「では閣下、もし貴方の家族が人質に取られたならどうします!?」

 そこで部屋の中に座っていた魔法使い達が一斉にざわつき始めた。無理もない、クラウチ氏の息子が捕まった直後の話しだ。皆この話題に関しては神経が過敏になっている。
 クラウチ氏は怒った様に「静粛に!」と木槌を鳴らした。

「ならば何故『例のあの人』失脚後、直ぐに自首しなかった!何故1年も隠れ住んでいた!!」
「それには訳があります!彼は恐れていたんです、もしこの子が他の『死喰い人』に見つかったらどんな目に遭うかと!」
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