第25章 【unhappy Easter】
シリウスへ食料を届けるため、ハリーとクリスはふくろう小屋まで行ったが、用意した荷物が大きすぎて小さなピッグウィジョンには運べない事が判明した。
「どうする?また学校のふくろうを借りる?」
「それより良い手がある。ネサラ!」
クリスが指をくわえて甲高い笛を吹くと、夕暮れの向こう側から、黒い点がこちらに向かってやって来るのが見えた。それはだんだん大きくなり、黒い翼を広げた姿が見えてくると、クリスの使い魔、ネサラがやって来てお行儀良くクリスの腕につかまった。
「よしよし、いい子だネサラ。少し重いが仕事を頼まれてくれるか?」
ネサラは「了解」とばかりに一鳴きして、バスケットの取っ手を足でしっかり掴んで飛び去って行った。その様子を、ハリーとクリスは黙って見届けていた。
ふと、夕日に染まるクリスの横顔を見て、ハリーは純粋に綺麗だと思った。白い素肌に赤い夕陽が映える。いつからか、男に間違われるほど中性的だったクリスも、今は立派な1人の女の子にしか見えない。
一体いつの間に自分達は成長してしまったのだろう。背丈も、入学したころはクリスの方が高かったが、今はハリーの方が高い。こうして、どんどん大人になっていくのだろうか。
「ん?どうしたハリー?」
「え?いや、なんでもない。ただ……君がキレイだなって――って!ぼぼぼぼく何言ってるんだろうね!!」
ハリーの慌てっぷりに、クリスがクスクス笑った。その姿がまた綺麗だった。ふと見ると、クリスの左の薬指に指輪がある。クリスにこんな物を贈る人間なんて1人しか思い浮かばない。
「その指輪……もしかしてマルフォイから?」
「ああ、これか?そうだよ。“エンゲージ・リング”なんだとさ。笑っちゃうだろう?」
「あのさぁ、正直言ってクリスはマルフォイの事どう思ってるの?」
「どうも、こうも、単なる幼馴染だよ。それ以上でもそれ以下でもない」
そう言って指輪を見ながら、クリスは少し寂しそうに笑った。クリスのこんな顔を見るのは初めてだ。マルフォイがこんな顔をさせているのかと思うと、ハリーの胃がチクッと痛んだ。