第23章 【愛すべき野良犬】
女の嫌がらせは凄まじい。だがこの女の――リータ・スキーターの嫌がらせに比べれば、どんな小娘の嫌がらせも可愛いものかもしれない。
それはシリウスと会う約束をした前日の事だった。いつも通り嫌な『魔法薬学』の2限続きの授業をする為地下牢に行くと、教室の前で人だかりが出来ていた。
何事かと思って首を伸ばすと、輪の中心でパグ犬そっくりなパンジー・パーキンソンがドラコ達と一緒にクスクス笑って雑誌を広げていた。
「ほら、来たわよ!」
「グレンジャー、貴女達の気に入りそうな記事が載ってるわよ!!」
パンジーがクリスに嫌がらせをすることがあっても、他の生徒に嫌がらせするのは珍しい。これは何か企んでいると感づいたクリスは、人ごみをかき分けパンジーから1冊の雑誌を勢いよく奪った。
するとスリザリン生は皆ハーマイオニーを見てまたクスクス笑いだした。と、丁度その時、スネイプが廊下の向こうからやって来て生徒は全員教室に入った。
ハリー、ロン、クリス、ハーマイオニーの4人は教卓から一番遠い席を取って急いで雑誌をめくった。すると雑誌の中ごろにハリーの写真が載った記事に、こう書かれていた。
【ハリー・ポッターの憂鬱な日々】
『名前を言ってはいけない人』を倒した少年、ハリー・ポッターは特別な存在だった――のはもう過去の話しかもしれない。
ハリー・ポッターは両親を失い、孤独の渦に溺れているところを同じ寮のハーマイオニー・グレンジャーによって救われ1人の男となった。だがこのハーマイオニー・グレンジャーという少女は、有名人をボーイフレンドにすることに味を占めたのか、ハリーの名声だけでは物足りなくなったらしい。
夏に行われたクディッチ・ワールドカップで、ヒーローとして輝いたブルガリアのシーカー、ビクトール・クラムも、いったいどうやったのか彼女の虜となってしまったのだ。
クラムは語る。「今までにこんな気持ちを他の女の子に抱いた事は無い」と。
ハッキリ言ってハーマイオニー・グレンジャーと言う少女は美少女と言うにはほど遠く、何故クラムが夏休みに彼女をブルガリアに招待したのか甚だ疑問である。