第14章 【Shall We Dance?】
「ちょっと!どういう事だよ!」
「貴女、セドリックとそんなに親しかったの!?」
「相手はハリーの対戦相手なんだぜ!?」
「いや、ちょっと事情があってね……ははは」
まさか泣いていたところを慰めてもらったとは言えない。クリスは愛想笑いをして誤魔化すと、改めてセドリックと向き合った。その間も、3人はセドリックとクリスを怪しい気な目でじーっと見つめている。
「悪いけど、クリスマスは家に帰って母様の墓参りをする予定なんだ」
「墓参りって――じゃあ君のお母さんは……」
「ああ、私を生んだ時に亡くなったよ」
「ごめん……僕、余計な事を言ったね」
「良いんだ、気にしてない。それよりなんで私を誘ったんだ?」
「君なら気軽に誘えるかなって思って」
「それって、私を安く見てないか?」
じろりと睨むと、セドリックは慌てて手を振った。
「ご、誤解だよ!君と一緒なら緊張せず楽しめるっていう意味で……」
「ぷっ!あはははは、冗談だよ冗談。どうせそんな事だろうと思った。でも残念だな、相手がセドリックならパーティに出ても良いかなって思ったんだけどな」
「それって、僕を魅力的な1人の男として見てくれてるって事?」
「まさか、体の良い虫よけさ」
「ははっ、だと思った」
セドリックはまるで小さい子供を撫でる様にクリスの頭をくしゃくしゃっと撫でた。お返しにクリスはセドリックの胸の辺りに軽くパンチした。
「じゃあ、残念だけど他の人を誘う事にするよ」
「良い相手はいるのか?」
「これでも一応ハッフルパフの人気者だからね。顔は広いよ」
「頑張れ色男」
「ああ。じゃあね、お姫様」
セドリックが階段を上がって行く姿に向かって、クリスは見えなくなるまで手を振っていた。そしてセドリックの姿が完全に見えなくなったと思うと、再びハリー、ロン、ハーマイオニーの3人に取り囲まれた。
「さあ、白状してもらおうか?あのセドリック・ディゴリーが何で君をダンスパーティに誘うほどの仲になったのか」
「それは……」
「それは?」
「――秘密!」
「あっ!クリス!」
一瞬の隙をついてクリスは廊下を走って逃げだした。別にセドリックとの仲はただの友達なのに、何故か今はまだ3人にはセドリックとの事を秘密にしておきたい、そんな気持ちがクリスの胸を占めていた。