• テキストサイズ

ハリー・ポッターと闇の姫君

第12章 【木綿のハンカチーフ】


 理由は分かっている。ハリーがいない所為だ。ハリーがいたら、きっとロンのテンションも大盛り上がりで店内を隅から隅までみて回ったに違いない。そこでクリスはちょっと意地悪な質問をした。

「やっぱり、誰かさんがいないと楽しくないか?」
「楽しくない!?へっ、別に!ハリーがいなくて清々するよ」
「私はまだ“誰かさん”としか言って無いけどな」

 からかう様にクリスが独特の口の端だけ上げてニヤリと笑うと、ロンは怒って店内を出て行ってしまった。それを追いかけて謝り、2人は次に『三本の箒』に向かった。
 ロンはハリーがいないかどうかしきりに店内を見まわしている。ロンは今日ハリーが透明マントを着てホグズミードにきている事を知らないのだ。クリスも店内を見まわし、ハーマイオニーの姿が無いか探したが、彼女の姿も見当たらないのでハリーもいないのだろう。

 それにしても、今日の『三本の箒』は混みに混んでいた。殆どの客がホグワーツの生徒で、しかもハッフルパフ生ときている。きっともうすぐ1週間後行われる『三大魔法学校対抗試合』に向けて前祝と言う所だろう。しかも皆『セドリック・ディゴリーを応援しよう』バッジをつけていた。
 そう言えば、ハリーと喧嘩していても、ロンはバッジをつけていない。きっと本当はロンも頭では分かっているのだ、ハリーが悪いわけではないと言う事を。それなのに絡まった紐は、どこまでも解くことが出来ず今に至っている。

「クリス?飲まないの?」
「ん?いや飲むぞ!ロンもどんどん飲め、今日は私のおごりだ!」

 ロンに声をかけられて、クリスは現実に引き戻された。あの輪の中には、きっとセドリックがいるのだろう。大勢の仲間たちに囲まれて、1週間後の課題を仲間たちと一緒に緊張と興奮で心待ちにしているのだろうか。
 それに比べ、ハリーに味方はいない。応援している同じグリフィンドール生はいても、本当に心から応援してくれる親友のロンがいないのでは、いないのと同じだ。こればかりはハーマイオニーでも埋め尽くせない穴だ。
 ハリーの心中を思い、クリスは世界一美味しくないバタービールを飲み干した。
/ 305ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp