第1章 最悪最凶
「……ろ……きろ……おい…おい!」
「!?…」
ベッドを蹴られ、飛び起きた。いつもと変わらない朝。眩しい朝日。
「…はよ。」
「ん…おはよう…。」
「菜月〜!早く起きなさーい!!」
別の部屋からお母さんの声が聞こえる。
「いつまでも春樹君に起こしてもらっててどうするのー!?」
「うぁぁ……うるさぁい…。」
朝から大きな声はやめていただきたい。
「おばさん、起きました!」
「ありがとー!いつもごめんね!春樹君!」
「…」(だから大きな声はやめていただきたい。と、言ったはず……言ってないや、思っただけだった…。)
私の名前は、佐野菜月。そして毎朝起こしに来てくれるこの人は、私の幼馴染の吉田春樹。春樹と迎える秋は、これで15回目。生まれた病院が同じで、お母さん同士が仲良くなった。性格や考え方まで同じな2人はすぐに意気投合した。
「…遅刻すんぞ。」
「…わかってる…。」
春樹の家庭は母子家庭。父親がDV男なため、春樹のお母さんが逃げてきた。そして私達と同じマンションに引っ越してきた。しかもお隣さん。
「…」
こんなに長いこと一緒にいるので、言えないことや見せれないものは、もうないわけで。
「おい貧乳、早くしろ。」
「殺す。」
ただ彼は、口も悪ければ喧嘩もするし、ピアスは両耳に3つずつ、髪の毛は金髪で、世でいう不良というやつだ。なのに頭は良いし、どこで勉強しているのか、といつも疑問に思う。