第3章 2日目
また次の日も私は同じようベンチに座っていた。
そして、なぜか昨日と同じように隣に昨日の人がいる。
でも、互いに無言のまま。
それでも私は何も気にならなかった。隣の人に興味なんてないから。
「いつもここにいるのか?」
金木犀を眺めてると低めの声が聞こえた。
あ、隣に人いたんだった。
「金木犀が咲いてる間はだいたいいます。」
「金木犀ってなんだ?」
スッと指をさして教えると隣の人はクルッと回り、私と同じ方向を向いた。
「この木が金木犀なのか?」
頷くことで返した。
それっきり沈黙が続き1時間が経ってしまった。
私がここに居るのは1時間と決めている。
ポケットに入れたスマホが震えて私に1時間経ったことを知らせる。
帰るか。
スマホのバイブを止めながら立ち上がる。
「帰るのか?」
「はい。」
「そうか。」
特に答えることなく歩き出し、イヤホンをつける直前。
「また明日な。」
なんて声が聞こえた。
また明日。
『また』なんて保証はできない。
この後、大雨が降れば金木犀は潔く散ってしまう。
そうすれば私はもうここにはこない。
何も言わずに歩いた。