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金木犀

第2章 1日目


次の日も私は同じ場所にいた。

金木犀が咲く公園。

そこで私はベンチに座りながらただ金木犀を眺める。

金木犀の香りを楽しみながら。

公園の入り口を背にして座っている私の耳に砂利を踏む音が聞こえた。

誰かが来たんだろうが特に興味がないから振り向きはしなかった。

ただ何度か警察に声をかけられたことがあるから、もし警察なら面倒だなぐらいにしか思わなかった。

今の時間は夜中の1時。

そんな時間に公園のベンチに座っている人がいれば誰でも不審に思うだろう。

しかも、私の今の格好は顔が見えないほど深くフードを被っている。

誰が見ても不審者だ。

「隣いいか?」

どうやら警察ではなかったらしい。

そして、声的に割と若そう。

「どうぞ。」

声の主は私とは反対の方向を向いて隣に座った。

チラッと視界に入ったその人はスーツを着ていた。

こんな時間にスーツなんて珍しい。

ごそごそと何かを取り出そうとする音が聞こえてきた。

「もし、タバコを吸おうとしてるんだったらやめてください。せっかくの金木犀のいい香りが消えるから。」

私の読みが当たったのか何かを取り出そうとする動きをやめた。

それからお互いに何も話さず時間は過ぎていった。

いつも通りただ金木犀を眺めていた。




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