第43章 GREEN 〔石切丸/R18〕
「こんな姿…恥ずかしいし…石切丸さんしか見せたくないよ…」
私の言葉に石切丸さんはふんわりと笑顔を見せる。
「そう言ってくれると嬉しいね」
キスした後の手が私を抱き締めて、その手が優しくて私も笑ってしまう。
「石切丸さん…好き、です…」
「あぁ…私も好きだよ」
今は緑の鮮やかな色が映える季節。
そんな中、石切丸さんの衣装の袖が今日もひるがえり、祈祷に励んでいるのが見える。
衣装の色も緑、外の緑の色に溶け込むようにその場の空気をも自分の色に変えていく。
そして祈祷が終わると私のところへまっすぐ戻ってきてくれる。
「ご祈祷、おつかれさまです」
私がお礼を言ってタオルを差し出すと、ふぅ、と頭の烏帽子を外し額に浮かべた汗を拭く。
「やぁ、麦茶か、ありがとう」
差し出したグラスをあっという間に飲み干して、私の持つ盆へ戻し、そして盆を持つ私の手をそっと触れて内緒話しをするみたいに囁いた。
「…今夜も私だけの主になってくれるかな」
答えは必ず「はい」しかない。
衣装の緑が光を反射してまぶしくて、目を細めて石切丸さんを見上げると、瞬時にちゅ、とキスが落ちてくるのが私たちの最近の挨拶。
<終>