第24章 歪んだ愛は、それでも一途 〔へし切長谷部/R18〕
目が覚めて、まだ眠っている主から離れ、部屋を出た。
すると廊下の向こうからやってきた刀と「おはよう」とすれ違う。
その刀は、すれ違ってから立ち止まったようだ。
「長谷部?」
振り向き、俺の後ろ姿を見ているのがわかった。
俺も振り向き「何だ?」と答えた。
すると相手は「…いや、なんでもない」と小さく答え、そのまま俺とは反対側へ歩いて行った。
気付いただろう。
主の香りが俺にまつわりついていたから。
そうか、夜伽の相手はあの刀剣だったか。
主の相手が誰かわかったが、俺はその刀とどうこうするつもりはない。
ああして主を追い詰めれば、主は俺の相手をしてくれる、というのがわかったから。
たまらなく主が欲しくなったら、今回と同様にすれば良いのだ。
そして俺をたっぷりと知ってもらい、いつか主が俺だけを選ぶようになれば良い。
俺は主を自分のものにしたくてならない。
あのからだも最高だったが、やはり俺は主にとって一番で在りたい。
気付いたあの刀は、主に何か言うのだろうか。
そして聞かれた主は何と答えるのだろうか。
俺はそれを想像して、一人姑息に笑みを浮かばせる。
何と言われようが構わん。
俺は主一筋であり、主には俺以外を見て欲しくないのだから。
俺の愛は歪んでいる?
そんな事はないだろう?
俺ほど一途な愛を、主に掛けられる刀はいないはずだ。
<終>