第1章 チョコレートを刻みます
「あなた、ハイお弁当」
「ああ」
「今日はスパニッシュオムレツね」
「ん、ああ」
「いってらっしゃい」
夫にお弁当をもたせ、見送る午前7時半。
今日は日曜日だけど、サービス業に就いている夫にとって日曜は休みではない。
「よし、食器洗うか」
私は手早く朝食の食器を洗うと、生ゴミをまとめ、シンクもピカピカに磨き上げ、調味料ケースの整頓をはじめた。
別に特別キレイ好きって訳じゃないけど、今日はキレイにしておかないと。なんたって来客があるわけだから。
そうこうしていると
ピンポーン
とドアベルが鳴った。
う、早い。大丈夫かなあ、これでちゃんとキレイになってるよね?私は台所ををサッと目で確認した。
うん…うん、大丈夫。
お客さんを待たせてはいけない。私はパタパタと玄関へ向かった。ガチャリと錠を回して、ドアを開く。ツンと冷たい外の寒気が入ってくる。眼の前には1人の男の子。彼は
「おはようございます」
と言って少し笑った。