第12章 シラス
「え、そうなの?」
「…うん」
「えっと。…どういうこと?」
「実は、ね…」
バレンタインの前日、葉月、いろいろ用意しながら一人で飲んでたみたいで。で、結構に飲んじゃって。一人一人に愛をこめてラッピングしてたんだけど、石見ながら飲んでて、ぼんやり、俺のこと想ってて…
『バレンタインは好きな人に想いを伝える日♪年に一度の女の子のラッキーデー!!ステキなプレゼントで、彼のハートをゲットしちゃおう♪』
みたいな特集やってるの、テレビでボーっと見てて…
で、勢いなんだろうね。じゃもうコレしかないじゃん?って。おまえ行っちゃえ!って、この石ラッピングしちゃったんだって。まあ、相葉ちゃんが聞いたのってその辺のことなんだろうね、きっと。
で、もともと用意してた俺のオプション、バッグに入れ忘れちゃったらしくて。ほら、酔っ払ってたから。でも、それ気付いたのがもう他の四人に渡した後で。俺だけナシってのは…ってよくよくカバン見たら、ナントこの石ラッピングした箱の方が入ってた、と。同じ包装紙だったから、たぶん間違えたんだって(笑)。
さすがにそれを渡すつもりはなかったらしいんだけど…
『…ないの?俺だけ、ないの…?』
みたいな顔してたんでしょ?可愛そうな大野くんが(笑)。
だから、どうしようもなくて、この石くれたんだって。うん。だからあの時のって、もったいつけてたわけじゃなくて、葉月がすんごい困ってる最中だったってことです(笑)。