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The one that got away.

第9章 ファントム・ルージュ





「んだよ、もう終わりか」

『…だね』

「ッチ、あっけねーな」


次々と攻撃をしてきた黒服の男達を倒した爆豪と凛。あまりの手応えの無さに爆豪は面白くないように呟いた

凛は再確認するように回りを見渡したあと、腕に着けてあるブレスレットを軽く叩いた


『ピーター聞こえる?』

「……あー、こちらピーター。聞こえるよ、終わった?」

『そっちは?』

「もちろん全員糸でグルグルさ!証拠もバッチリ!」

『…1回集まれる?』

「うん!」

『じゃあ……』


話を進めていく凛の後ろから爆豪はブレスレットを覗くように前のめりになった。
通話機能もあるこのAIブレスレットはさながら近未来の象徴のようだと思った。もし自身がサポート科だったならもっと興味を持っただろうか。


『ってことだから今から下に……』

「あ?…なんだよ」

『…別に』


後ろから覗きこんでいた爆豪。振り返った凛からすればかなり近い距離であり驚いたのだが、そんなことを爆豪がしるはずもなく言葉の詰まる凛に苛立った


「怪我でもしたんならさっさと言えや」

『してない』

「……ッハ、そーかよ」


何を言ってるの?とでも言いたげな凛。だが爆豪は別にそれを否定しなかった。それは先程の凛の戦いぶりを見たからだ

肉体戦での男女の体格の差などを気にしないような戦いぶりだった。

相手が振りかぶった拳を流すかのように避け鳩尾を一発。足を引っかけ転ばせ顔面に肘打ち。頭を足で挟んでそのまま地面に落とす。

彼女の個性を入り込みながらの戦闘。

消えては現れ、また消えてを繰り返す。

敵を翻弄しながら倒すその姿。並大抵のプロでさえ出来ないような動きだった。女性のしなやかさを存分に発揮しているかのような動き。

高校では見ることができなった凛の一面。…彼女と離れていた空白の時間を見た気がした


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