第7章 恋人(仮)作戦その2
「なあ緑谷」
「何?轟君」
「俺らこれで本当にいいのか?」
「あぁ、うん。…多分」
手にワインの入ったグラスを持っている轟は緑谷に話しかけた。緑谷も手にグラスを持っているが一切飲んではいない。
二人が今居るのはこのビルのメインホール。ピーターの指示で着いた先だったのだが…。
「僕たちすごく見られてるね」
「だな」
正装をして髪型を少し変えていても変装をしているわけではない。ヒーローが素顔でいたのなら誰だって注目はする。だが、この注目の仕方は未だに感じたことのないものだ
「あーあー、こちらスパイダーマン。聞こえてたらグラスを叩いて」
「「!!」」
耳につけている小型イヤホンからピーターの声が聞こえて二人は素直にグラスを指で叩いた
「ありがとう!えーっと、それじゃあ…」
彼は部屋で待機と言われていたはずだが…と緑谷は思った。それは轟も同じようで眉間にシワを寄せている
「あっ大丈夫だよ、ボクは部屋にいるから。キミたちの行動はカメラで見てるだけ」
カメラ?と思うと轟は緑谷のネクタイピンをじっと見た。あぁなるほど、このネクタイピンにカメラが。
「キミたちすっごく見られているけど気にしないで!だって日本で有名なヒーローなんでしょ?…だからリンはキミたちを選んだんだ。言わばキミたちはこの作戦のキーマンだ」
「あとは頼むよ!」とピーターは言い終わると通信を切った。
そして、その音を聞いた緑谷と轟は目を合わせ合図をすると一人の人物に歩み寄った
すると、気がついたのかその男は驚きの表情を浮かべたあと嬉しそうに微笑んだ
「ヒーローデク、それにショートまで…まさか本当に来てくれるとは…!」
「初めまして、デクです」
「あぁ初めまして!」
そして相手が金色の指輪をはめた手を差し出してきたので緑谷は笑みを浮かべながらその差し出された手を強く握った。
この男こそが今回のターゲットであり、今までに緑谷たちが出会ったことのないヴィランであった。