第6章 少女の消失
「ばっ、くご。おまっ…」
まさか爆豪が泣くなんて思いもしなかった相澤は動揺を隠せなかった。だが、等の本人は泣いている自覚がないのか話を進めた
「俺がアイツを追い詰めたんか。俺が敵なんかに捕まって弱かったから…だから」
今までに見たこともないほど弱音を吐く爆豪。
これは少しマズイ、いやかなりヤバイと思った相澤は緑谷に部屋を出ていくように命じた
そして、緑谷は心配そうな表情を浮かべながらも部屋を跡にした
「爆豪落ち着け、何もお前のせいじゃない。違う、違うんだ」
相澤は後悔した
彼女が雄英を辞めたことを告げた日、妙に静かな爆豪を見て気がついてやればよかった
爆豪と瞬木の二人には緑谷とは別の確執があるとは思っていた
いつも静かにただ爆豪を見つめていた瞬木に対して
暴言を吐く爆豪
誰が見ても相性の悪い二人
だからまさか、こいつらに限ってそんなわけ…と勝手に決めつけてしまっていた
彼らはまだ高校生なのだ
身体だってまだ出来上がっていない
それは心も同然だ
不安定で不十分で脆い
相手に上手く気持ちを伝えられないこともある
酷く相手にあたってしまうこともある
そして、爆豪は人一倍それが激しかったのだ
「お前瞬木のこと…」
「そっ、んなんじゃねーわ!」
高校時代だって相澤はこんな話を誰かとしたことなどなかった。そして今後もするハズはなかった。ましてや自分の生徒となんて…
「……はぁ」
未だに涙を流す爆豪の頭に相澤は手を置いた。手のかかる生徒だとは思っていたが、こいつになら……と思う自分もなかなかのものだ
「爆豪、今から言うことは絶対に他言するな。…お前の瞬木への気持ちを信じて俺からお前に託す」
「だから違えわ!……は?……やっぱ何か知ってんのか」
「…」
この日教師になって初めて、相澤は規則を破った
だが、これが間違いだと思わない自分もどこかにいた
それが何故なのかを知るのは6年先の話である