第3章 近づく距離
くしゃりと顔を歪ませてまた涙を流す。
仕方ないと愛を抱き上げれば小さく悲鳴をあげた。
『……ひゃっ……』
「とりあえず座って話そう。」
リビングに入ってソファーに座る。
勿論、愛は向かい合わせで俺の膝に跨がらせる。
『え、あの……座るのは良いんだけど……これは……』
「逃げられない様に。」
『……や、だ…………泣き顔……見られ……』
「さっきから見てるよ。大丈夫、泣いてる愛も可愛い。」
『は?!』
顔を真っ赤にして驚く彼女に笑いながら手で顔を挟みしっかり向き合う。
「俺は絶対に愛を嫌いにならないし、離れないから、話して。」
『……っ』
「ん?」
小さく話し出してくれたそれは想像を遥かに越えた内容だった。
幼い頃から動物と話せる力があった愛は、物心ついた時に気付き嬉しくなって親に話したところ気味悪がられた。
動物と話す愛を見て周りは離れていき、親は精神を病み自殺。
実業家だった親の莫大な遺産を1人娘である愛が相続したが、それを親戚中が狙いあの手この手で奪おうとしてきた。
唯一、離れなかった親友達が助けてくれてその内の1人の子が自分の親に頼んで今いるマンションの1部屋に住める様にしてくれたそうだ。
『……今は、親戚から何もアクションないけど……たまに連絡来ては罵声浴びせてくる。そんなのばっかで気の許せる親友達以外に感情見せるのすら嫌になってた。』
「……そうだったんだ……」
『……私の事を知ると、力を怖がって離れる人もいれば遺産狙って近付く人もいて……ほとんどの人が敵に見えて……それだったら、近付かない様に関わらない様にしようと決めたの。でも……』
「でも?」
『……零には……嫌われたり、怖がられたりしたくなくて……私を知らなければ最後まで一緒にいられると思った。』
ギュッと抱き締めて頭を撫でれば、首に腕が回る。
「ごめん、無理に聞き出して。でもありがとな、話してくれて俺は嬉しい。」
『……信頼してるの…………してるから怖かった……』
「うん、そうだよな。そんな人ばっかだったらそうなるよな……だけど俺は違うし、動物と話せるとか凄いなって思った。」
『……すごい……?』
「あぁ。さっきのも鳥に頼んでやってもらったんだろ?」
『う、うん……』
涙の残る目元に口を寄せた。