第1章 存在
カランカラン♪
拓哉「いらっしゃい………って、なんだ藤ヶ谷かぁ」
太輔「木村さん、なんだはないですよ(泣)」
ここはヴァンパイアのオアシス。
ここでは本当の自分でいられる。
拓哉「コーヒーでいい?……………それとも………」
本当の自分でいられるという事は………
太輔「コーヒーで大丈夫です」
拓哉「お前、最近飲んでないよなぁ?俺達はヴァンパイアなんだぜ………」
太輔「わかってます。俺、大丈夫ですから………」
拓哉「まぁ、お前が大丈夫ならいいけど………」
そう言って木村さんはコーヒーを出してくれた。
拓哉「それで?」
太輔「えっ?」
木村さんがカウンターから身を乗り出し、俺の顔を覗きこんだ。
拓哉「俺に話したい事あるんだろ?」
この人はいつもそう。
俺が話をする前からお見通しって感じで、俺が話をするきっかけを作ってくれる。
太輔「木村さんには隠し事できないですね………実は………」
俺は木村さんにここ最近の出来事、そして今の俺の気持ちを話した。
拓哉「ふ〜ん、人間の女の子ねぇ………藤ヶ谷はこれから先どうしたい?」
太輔「俺は………」
俺はこれからどうしたいんだろう………
ちゃんに自分の存在を知られた今、もう知らないフリはできない………
拓哉「藤ヶ谷の話を聞いて、そのちゃんって子は悪い子じゃないみたいだけど、もし藤ヶ谷がヴァンパイアだって事がわかった時、きっとお互いが辛い想いをすると思うんだ」
たしかにそうだ………俺が人間じゃないってわかれば、きっとちゃんは俺を怖がるだろう。
拓哉「今ならまだ傷つかずに済むぜ」
木村さんの言葉に、俺は返事を返す事ができなかった。