第4章 過去………そして未来へ
ー太輔視点ー
木村さんの話を聞いたちゃんは、涙を流していた。
拓哉「俺はあの日から、ヴァンパイアだけを相手にする今の仕事を選んだんだ」
「木村さん………今でも静香さんを愛してますか?」
拓哉「うん。俺にとって大切な人は、静香だけだから」
ちゃんは、何かを考えているようだった。
ちゃんが木村さんの話を聞いて、どう思ったか………
俺と同じ気持ちなのか………それとも………
「静香さんは、木村さんとの別れを選んだ。もし別の選択があったとしたら、今も静香さんは木村さんの側にいたと思いますか?」
拓哉「いたかもしれない…………けど、俺はその選択を押し付けることはできないんだ」
「どうしてですか?」
拓哉「それは………そうすることで、今まで静香が生きてきた事が全てなくなってしまうから………」
そう言うと木村さんは、ちゃんの前に赤いドリンク"Blood"を置いた。
拓哉「これはBloodと言って、ヴァンパイアが血を欲しがる衝動を抑えるドリンクなんだ。これにヴァンパイアの血を一滴入れて人間が飲むと、その人間はヴァンパイアになれる…………けど、俺には静香にこれを飲ませる事はできなかった」
俯く木村さん。
ちゃんがそっと木村さんの頬に触れた。
「木村さんは優しいんですね」
拓哉「えっ?」
ニコッと笑うちゃん。
「木村さんは静香さんを本当に大切にされていたから、これを飲ませる事ができなかった。静香さんを思っての事だったんですよね?」
この時初めて、木村さんの涙を見た。