第3章 すれ違う心………揺れる気持ち
たくさん涙を流したけど、ヴァンパイアの血は一滴も零れず………
俺は無意識に木村さんの所へ
オアシスまで行くと、何も聞かず俺を中に入れてくれた木村さん。
あんなにたくさん泣いても涙は溢れるもので、木村さんの顔を見てまた泣いた。
そんな俺の背中を、木村さんはずっと擦ってくれた。
俺が泣き止むと、木村さんがポツリと話し出した。
拓哉「藤ヶ谷は本当にちゃんのことが好きなんだな」
俺はコクリと頷いた。
太輔「だけど、もうちゃんには逢えない………」
拓哉「どうして?」
太輔「ヴァンパイアの姿を見たちゃんの目………怯えてた………きっと俺のことを怖がって逢ってくれないと思う………」
拓哉「………」
太輔「木村さん、どうして俺はヴァンパイアなんですか………どうしてちゃんは人間なんだろう………こんなに辛い思いをするなら、出逢わなければよかった………」
俺の頬を流れる涙を拭ってくれると、木村さんは遠くを見る様な目で話し出した。
拓哉「俺はそうは思わない」
太輔「えっ?」
拓哉「藤ヶ谷がちゃんに出逢ったから、誰かをこんなに好きな気持ちを知ったんだろ?」
太輔「…………」
拓哉「前にも話した事あったよな。俺にも好きな女がいたって」
太輔「はい」
拓哉「俺の好きな女も…………人間だったんだ」
当時の木村さんも、今の俺と同じように苦しんだ事………
最悪の結末…………そして、今の気持ち………
俺にとって頼りになる兄の様な人なのに、木村さんも俺と同じなんだと、この時初めて知った。
拓哉「藤ヶ谷とちゃんには、俺と同じ道を通って欲しくないと思ってる。けど、これからどうするかは2人次第だ」
この日は木村さんの家に泊まり、2人で飲み明かした。
その日からちゃんからのメールや電話はない。
俺もどう話せばいいかわからず、こっちからも連絡しなかった。