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落花

第6章 6




アーサーside





夢を見ていた。

俺の隣には愛しいあの子が居る。

良かった、キミが居なくなったのは幻だったんだ。

愛しいあの子。久しく触れていなかった、触れたくて堪らなかった頰に手を伸ばす。

「なんだか久しぶりな気がするー。キミとはいつだって一緒に居たから、久しぶりなワケ無いのにね。」

彼女の頰に触れながらその存在を確かめる。

うん、温かい。

「…もー、アーサーってばどうしたの?」

大好きなあの子があの声で俺に話しかける。

まるで一度失ってしまっていたような懐かしさを感じる。

「んー?キミが可愛くて。愛してるよ。」

そう囁くと、彼女は真っ赤な顔をするんだ。

「き、急にどうしたのっ!今日のアーサー、なんだか変!」

そう、その顔。可愛くて堪らない。

「なーに?照れてるのー?」

そうからかうと、彼女はいつも もう! と頰を膨らませる。

そして俺が大好きなあの笑顔を見せてくれる。

「私もアーサーのこと、愛してるよ!」


愛しい、可愛い。何よりも大切なあの子。

「君が居なくなったかと思った…」

柔らかくて温かい彼女をきつく抱きしめた。





………





「ん…」

眼を覚ますと、見慣れた茶色い壁紙。

「なーんだ…夢、だったんだ…」

現実は残酷だ。

先程まで愛しいあの子に触れていたのに…

そう思った時、ふと気がつく。

自分の手が、何か柔らかくて温かいものに触れていることに。

驚いて視線を下げると…

「アナ、スタシア…?」

見ると、俺の胸より下にアナスタシアが居る。

すやすやと寝息を立てる彼女の手に、ひと回り大きな俺の手が包み込まれるように握られている。


「どうしてアナスタシアがここに…?」

眠りに落ちる前のことを思い出そうとする。

そういえば…コーヒーを飲んだあとに部屋に戻ると…
何故か俺の部屋にこの子が居て…

「膝枕、してもらったんだっけ…」

そのままアナスタシアの膝で眠ってしまい、その後アナスタシアも寝ちゃった…?

「そっか…」

あの子の夢を見て目が覚めた時は、寂しさに押しつぶされそうになるけれど…

今日は、アナスタシアの存在に救われた気がする。


「ありがと…」


眠っている彼女に小さく感謝を伝えよう。

居てくれて、ありがとう。



……





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