第6章 6
ある日のこと
珍しくお屋敷の人達のお手伝いも無く、時間を持て余していると
伯爵の部屋に呼ばれた。
「伯爵の部屋に呼ばれるのは珍しいな…」
伯爵には相変わらず精力を分けて貰っている。
「私の部屋に来てくれることが多いけど…呼ばれるってことは大切な話でもあるのかな…」
考えているうちに部屋に着いてしまう。
とりあえず、ノック…
コンコン、とノックをするとすぐに中から声する。
「入っておいで。」
その声に答えて扉を開く。
「失礼します。」
「やぁ、いらっしゃい。呼びつけてしまってすまない。少し話があってね…」
いつも通りスマートな伯爵。
「お話、ですか…?」
言われた通りソファに座る。
私が座ったのを確認して、伯爵が口を開く。
「屋敷にも慣れてきたようだね。不便はないかい?」
「はい、皆さん良くしてくれます。」
そう答えると、伯爵が微笑みながら それは良かった。と呟く。
「それで…お話と言うのは?」
「あぁ。実は明日からしばらくの間、屋敷を開けることになってね。その間は君に‘食事’をさせてあげられなくなりそうなんだ…」
食事 とは伯爵に分けてもらっている精力のことだろう。
「大丈夫です、数日食事を摂らなくても平気だと思います。」
精力は充分分けてもらっている。数日食べなくても恐らく平気だろう。そう思って答える。
「しかし…今回の外出は具体的にいつ戻ることが出来るかはっきりとわからないんだ…その間何も摂らないというのも…」
「そう、なんですか…?お忙しいのですね…でも私なら平気です!伯爵には沢山貰っているので!」
「私がいない間…君に何かあったら大変だろう?君さえ良ければ、別の人物に力を分けてもらって欲しい。屋敷の皆には私の方から伝えてあるから、君が選ぶと良い。勿論皆も同意してくれているよ。」
他の人から食事を摂る…
思ってもみなかった提案に驚いてしまう。
それに…皆さん同意してくれている…って。
「そ、そんな!分けてもらう身で選ぶなんて出来ませんっ…!」
流石に皆さんに失礼過ぎると思うっ!
「君ならそう言うと思っていたよ。入ってくれ。」
伯爵は部屋の外に向けて声をかける。
扉が開くとーーー