第1章 無自覚鬼畜後輩×浅野学秀
僕には大好きな恋人がいる。
後輩だし、男同士だし、問題は山積みだけれど、それでも彼と一緒にいられるのが幸せすぎて、やめられない。
正直に言って、彼_______トウヤになら抱かれてもいいと思っている。
むしろ抱かれたいくらいだ。
『浅野先輩、どうしたんですか?』
自分のベッドに腰掛けていたトウヤが、僕を覗き込むようにして尋ねてくる。
「あぁ……なんでもない。」
『そうですか?
……あっ、そういえば浅野先輩、今日赤羽先輩と話してましたよね。なに話してたんですか?』
高校に上がってから、赤羽は僕と同じクラスだった。
僕たちの関係を面白がってか、よく絡んでくるのだ。
「別に……どうでもいい話だよ。」
『……俺に、言えないようなこと?』
ぼそり、とトウヤが呟く。
その言葉を聞き取ることは出来なかったが、トウヤはひどく悲しそうな顔をしていた。
「え?」
どさりと床に押し倒された。
トウヤの整った顔が間近に迫り、ドクンと心臓が跳ねる。
『俺に言えないようなことなんですか?最近赤羽先輩のこと気にしすぎじゃないですか?もしかして、赤羽先輩のこと、』
目に涙を溜めて、早口でまくし立てられる。
急に押し倒されて頭が混乱していたが、トウヤが赤羽に嫉妬していることだけはよくわかった。
「そんな訳ないだろう?僕はトウヤ一筋だ。」
『……本当に?』
「僕は嘘はつかないよ。特に君には絶対。」
わしゃわしゃと頭を撫でてやると、トウヤは途端に嬉しそうな顔をした。
そして僕の手を取り、うっとりとした顔で頬ずりをした。
『ごめんなさい、先走っちゃって……。
……でも、浮気なんてしたら許しませんからね。』
そう言ってトウヤが起き上がろうとしたので、僕はその手を掴み、引き寄せた。
『ちょっ、浅野先輩っ……!?』
「……僕はね、君になら抱かれてもいいと思っているんだ。」
トウヤの手を自分の胸に当てる。
僕の心臓はうるさいくらいにバクバクと振動していた。
「……続き、しないのかい?」
そう言った時の僕の顔は多分、林檎のように真っ赤だっただろう。