第2章 私は彼の何なのか
あぁ、やっぱり、私の勘違いだった。
勘違いと言うより、信じたくなくて勘違いしていた振りをしていただけなのかもしれない
私の視線の先には見知らぬ女の人と
私の彼氏
いや、彼氏なのかさえわからないけれど
付き合っては、いる。多分
なんで付き合っているとはっきり言えない理由は明確だ
"恋人"らしい事なんてしたことがないから
別に、私は普通の女の子が思うような恋人らしい事、例えば手を繋いだりとか、デートとか、積極的にするタイプじゃないから彼と恋人らしい事をしなくても気にしてはいなかった。あの一言を言われるまでは
「えー!手も繋がないの?」
「てかそれってさ、恋人って言える?」
「私だったら本当に付き合ってるのかなって思うよ」
その言葉で気がついたわけじゃない。気にならなかっただけでわかってはいたのだ
実際、第三者から見れば付き合っているなんて微塵も思わないだろう
手も繋がなければ、2人だけで会うこともない
2人だけで会うと言えば、仕事帰りにお互いのどちらかの家で落ち合い、体を重ねるだけ
あれ、これってセフレと同じだ
そう考えたこともあった
そう思うとどうしても不安になって、行為が終わった後さりげなく聞いてみたことがある
帰ってきたのは「恋人だろ」という言葉
そう言われたなら不安も消えるだろう。そう、ちゃんと私の顔を見て言ってくれたなら
その"恋人"の言葉は私ではなくベランダの冷えた空気に告げられた
彼女がそんなことを聞いたら何かあったと思うだろう。
思わなくても彼女の顔くらい見て言ったらどうなのだ
私に向けられたのかもわからないその言葉に「そっか」と返した
彼が、わからない。
デートもしないでセックスだけして、何が恋人だ。ただの性欲処理じゃないか。
相談した友人には別れた方が良いと言われた。当たり前な返答だろう。
いや、私だってそうしたい。出来るなら
出来ないから困っているのだ
「別れよう」の一言が言えないのは、私が彼を好きだから。
恋人らしい事が出来なくても、「好き」さえも言われたことがなくても、好きなんだ
だから彼から終わりを告げられるまでは恋人同士の関係を続けていたい
例え恋人と言える事などしたことがなかったとしても
それで良いと思っていた。