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届かないとしても

第3章 大嫌い!


「あら~悠斗くん!久しぶりねぇ、元気?」

「はい」

「ちょっとお母さん!早く追い出して!」

「何言ってるのよ。せっかく来てくれたんだから。ほら悠斗くん、お菓子でも食べてってね」

「は~い」

もう、なんで追い返してくれないんだ、お母さんのアホ。

今月で何度目だ。
悠斗とは家が隣同士の幼なじみ。
だから高校生になった今でも家を行き来しているのだ。
まあ家に来るのは主に悠斗だけど。


幼なじみ、ね。
昔は可愛かった。今はあんなんだが昔は泣き虫でよく優ちゃん、って言いながら手を握ってきたものだ。

あんなに可愛かったのにどんな育ち方したらあんなふうになるんだ。
いや悠斗の両親に文句はないが。
悠斗の両親は優しい。ほとんど家にお邪魔しなくなった今でもすれ違うと優ちゃん、と挨拶してくれる。

その両親からどうしてあんな奴になるんだ?
意味がわからない。

まあ良い。さっさとお菓子食べて帰ってもらお。


「なぁ優」

「何?」

「明日テストだけど勉強してんのか?」

え?

「え、明日テストだっけ…」

「優先週言ってただろ。来週テストだって。もしかして勉強してないのかよ」

「……………」

絶望だ。勉強なんて全くしていない。
なんで毎日LINEしてたのに教えてくれなかったんだ親友よ!
どうしよう、赤点なんて取った日にゃお母さんの頭に角が生えてしまう。

「仕方ねぇな。俺が教えてやるよ」

「はぁ?あんた1年じゃない」

「俺は頭良いの。2年の問題くらいわかる」


……くそぅ。
う~~~~ん、しょうがない。赤点を取るよりマシだ。
今回だけお世話になってやろう

「今回だけ聞いてあげるわよ」

「ふ~ん?それが教えてもらう人の態度?」

………このとんだ鬼畜野郎め。

「………おしえて」

「何?」

「~~~っ、教えてください!」

「よく出来ました」

年上に向かって!絶対恨んでやる!
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