LOVE*CHOCO*KISS‼︎ 〜HQバレンタイン企画〜
第3章 【SS】月島蛍のバレンタイン
戦場からの帰り道。
冬の空は17時を過ぎると空がオレンジに染まり出す。
小鳥遊さんが住むマンションまで送り届けた別れ際、コートの袖を掴まれ立ち止まる。
「月島くん、良い盾っぷりだったよー!付き合ってくれてありがとね。」
「来年は勘弁してください。」
「それはどうかなぁ〜。あ、えっと、あのね?コレ。」
差し出されたのは深い紺色の包装紙に包まれ小さな箱。臙脂のつるりと光沢のあるリボンが結ばれていて、一目でバレンタインのチョコレートだと分かる。だけどこんな包みのチョコレートは今日一緒に買い回っている時には見た記憶がない。
「え?僕にですか…?」
「うん。今日は、ありがと…あと、私の気持ち…」
「こんなの買ってましたっけ?」
「ううん、違うの。コレは、なんていうか…その、手作り的なやつ、です!」
少し照れて俯きながらそう呟く姿に、不覚にも心臓を射抜かれる。
「わざわざ、作ったんですか?」
顔が熱すぎて急いでマフラーを口元まで引っ張る。
「う、うん。だって……本命チョコだし。」
上目遣いで僕の顔を覗き込む小鳥遊さんがどうしようもなく可愛らしく思えて、立て続けに矢を射抜かれたように胸はズキズキと音を立てて痛み出した。
(ちょっと…反則でしょ、こんなの。)
一日中既製品のチョコレートを買い漁った後に、まさか手作りの本命チョコをもらうなんて想像出来なくて、なんの言葉も用意できないまま僕は口を開く。
「……どうも、ありがとうございます。……ナギさんごと、貰っときます。」
コクリと頷くのを合図に、僕は包みごと彼女の手を引き寄せた。
「こんなタイミングで名前呼びなんて、ずるい……」
抱きしめた腕の中でナギさんはそう呟いた。
終。