LOVE*CHOCO*KISS‼︎ 〜HQバレンタイン企画〜
第8章 《茂庭》恋の始まりはすれ違いから
「先輩何回確認すれば気が済むんですか。……とりあえず誤解は解けたみたいなので、私はここで失礼しますね。茂庭先輩、買い出しありがとうございました。それでは、ごゆっくり……」
最後にニヤリと二口みたいな嫌な笑みを浮かべながら、滑津は学校へ戻っていった。
「あ、あの……小鳥遊さん……その、ごめん、とんちんかんな事言っちゃって……俺、てっきり他のやつに告白するもんだと思ってて、それで……」
「……私も、途中からなんか話が噛み合わないなとは思ってたけど……」
「ごめん、鈍くて……」
「ううん。私も分かってくれるだろうって甘えてたから」
「そんなこと、ない」
思わず、言葉とともに小鳥遊さんの手を握る。
小鳥遊さんの告白、嬉しかった。
胸が高鳴るってこういうことなんだって、初めて分かった。
──そう、素直に気持ちを口にすればいいだけなのに、うまく言葉が出てこない。
俺、簡単に「素直に気持ちを伝えたらいい」なんて言ったけど。
それってどれだけ難しいこと言ってるのか、今分かった。
言わなきゃ伝わんない。
そんなの頭では分かってんのに。
金魚みたいに口がパクパクするだけで、肝心の言葉がひとつも出てこない。
勇気を出せ、茂庭要。
漢を見せろ、茂庭要!
自分で自分を奮い立たせて、精一杯の勇気を振り絞る。
「お、れも、……好き!」
声なんてかすれ気味で、言葉にも詰まって、まったく締まりのない返事だった。
だけど、そんなのひとつも気にせず、小鳥遊さんは満開の花みたいな可愛らしい笑顔を俺に見せてくれた。
「ありがとう、茂庭くん」
また一粒、小鳥遊さんの頬を涙が伝っていった。
だけどその涙は、さっきとは違う輝きを持っていた。
―fin─