LOVE*CHOCO*KISS‼︎ 〜HQバレンタイン企画〜
第23章 《菅原》恋する私の出発点
「…俺さ、1年の頃の今頃本当は部活辞めようか迷っていた時期があったんだ」
「え………?」
思いもよらなかった菅原の切り出した話に私は驚いて顔を向ける。
目が合った彼は照れくさそうに笑っていた。
「これは、大地も旭も知らない話」
「本当に…?」
「うん、でも思い留まれた。なんでだと思う?」
何を目標にバレーをしているのか、何処に向かえば良いのか見失いそうになっていたあの頃。
不安だったのは私も同じだったけれどまさか菅原がそこまで思っていたなんて。
「小鳥遊が居たからだよ」
菅原の言葉に思わず動きが止まる。
私…………?
「『オレンジコートに立った時の気持ちってどんなだろうね』小鳥遊さ、そう言ったんだよ」
「………私が?」
「そう(笑)覚えてないよな、あの時も呟いただけって感じだったから」
菅原の手が、私の手をそっと掬い取り優しく握った。
突然の事に唇が震える。
「その気持ち、俺も知りたいってあの時素直に思えた」
「…………」
「バレー、続けて良かった。今はっきりと言える、オレンジコートに立てた時の気持ちは最高だった!」
「………菅原、」
「好きだ小鳥遊、3年間…ありがとう」
気づけば、頬を涙が伝っていた。
「………私も、好き」
やっと絞り出せた言葉は菅原の耳に届いただろうか。
握られていた手が引かれ、私の体はすっぽりと菅原に包まれる。
「チョコレート、見たよ」
「あ………」
「ビックリしてさ…泣くかと思った!」
私が菅原に、と用意したチョコレート。
ビターチョコレートとホワイトチョコレートで作った小さなユニフォームの形。
背番号はもちろん『2』。
「今日ユニフォームを返した時やっぱり少し寂しかったんだ、少しな?…でも箱を開けたらそれが戻ってきて…今は腹の中(笑)」
「も、もう食べたの……?!」
「うん、小鳥遊を追い掛けて走りながら食ったよ」
抱きしめられる腕が、きゅっと強まる。
私もそれに応える様にそっと菅原の背中に腕を回した。
「好き、小鳥遊、大好き」
顔を上げれば優しい瞳と視線が交わり、その距離はゆっくりと縮まる。
ふわりと香るチョコレートの香りを感じながら私はそっと目を閉じた。
END